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「美味しい……」
「でしょ?」
「当然だ」
これでもかっていうくらいたっぷりと回し入れられた溶き卵が、私の前世を優しく包み込んでくれる。
とろみがついたあんかけ風のうどんは、冷え切っていくだけだった自分の身体を温めてくれる。
目の前にいる男の人たちは、まるで私の前世を見知ってくれている人なんじゃないかなって思ってしまうほど、出された料理が体と心に染み渡る。
「いつもと、うどんの味が違う気がします……」
「ディナの愛情が入ってるからね~」
「愛情じゃなくて、生姜と貝柱」
また、耳馴染みのある食材が私の聴覚を揺さぶる。
「貝柱の旨味が出ただけのこと……」
「生姜って、体を温める作用があるんだよね」
私にかけてくれる言葉に耳を傾けながら、私は私のために用意してくれたかきたまうどんが冷めないうちに口へ口へと運んでいく。
「ディナが、よく言うんだ。体はあっためた方がいいって」
「とても、とても、心のこもったお料理だと思います」
ディナさんという名前の男の人は、西洋風の世界観に溶け込む金色の髪色で私の興味を奪っていく。
ディナさんは私のことをどうでもいい扱いしてくるけど、私に怒りの感情を向けているわけではないってことが、ほんの少し上がった口角から伝わってくる。
「あっちの無口な料理人がディナート。俺の名前はアルカ。食材調達のアルカ、ね」
出会ったときから、私にきらきらと眩しい笑顔を向けてくれるアルカさん。
他人を放っておけない人なんだってことがよく伝わってきて、そんなアルカさんの優しさのおかげでご飯の美味しさが倍増していく。
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