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1 リリアナ発見
真冬の曇天の下、ふざけたような派手な色の屋根を晒す塔の中、ガイウスは目の前の光景に呆然としていた。
14年間、心の奥底で大切に想い続けていた人との再会が、これほどまでに残酷とはだれが想像し得ただろうか。
別れの挨拶をすることも許されないほどの、急激な政変に巻き込まれ、それでもいつか再会することを切に願い続けていたガイウスに、リリアナの変わりようは自らの無力さを突き付けているようだった。
アナトリア半島の東部に広がる広大なクエンカ盆地は、アクィナス公爵とヴァレンス侯爵とで領地を二分していた。その水はけのよい土地を生かして古くからブドウ栽培が行われており、アナトリア王国内でのワインの一大産地となっているところだ。
この年は、収穫が済んだ秋からアクィナス領とヴァレンス領の境にそれぞれの軍隊が進軍し、陣を張り、小競り合いを繰り広げていたが、年明けに大規模な戦闘が行われ、アクィナス公爵側の勝利で勝負が決した。
アクィナス公爵は、かつての国王ヘンドリックの遺児であるアーク第三王子を旗頭として、現在の半島の支配者を名乗る者に反旗を翻し、賛同する諸侯とともに挙兵していた。
対するヴァレンス侯爵は、14年前に兄王を弑逆しアナトリア王を名乗ったブライアンを支える勢力の筆頭であった。
今、アナトリア半島は、アナトリア王家における叔父と甥の、王位を賭けた戦いの最中である。
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