ゴーストライター

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 作品の映像化はあまり好きではない。あいつらはせっかく命を削るような苦しい思いをして書き上げた作品を、芸能事務所の意向だとか、監督の個性だとかいって、簡単に話を作り変えてしまう。  私の魂の作品をなんだと思っているのか。売れてきてすぐの頃はそれに反発するように、映像化の話はすべて断っていた。しかし出版社としては人気作家の私の作品で次の商売をしたかったのだろう。最後は社長までもが頭を下げに来たのだから承諾するしかなかった。長くこの世界に居続けるには折り合いも必要なのだ。 「どうですか先生、このあと打ち上げというか、お疲れ様会というか一席設けようかと思っているのですが」 「ああ、それもいいな。なにか美味いものでも食べよう。君も会社の金で美味いもん食いたいだろう」  担当者は「バレましたか」と苦笑いをしつつ、「では早速、予約を取ります」とスマートフォンを操作する。 「先生はなにか食べたものとかありますか?」
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