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私の言葉に担当者は「滅相もございません。先生は今や人気作家です。お忙しいのに気が回らずに申し訳ありませんでした」と慌てた素振りで頭を下げた。
そのまま自宅の前まで送ってもらった。閑静な高級住宅街にある瀟洒な邸宅が私の住処だった。価格もそれなりにしたが、私の場合仕事場を別に持たない主義だったので、せめて一日中いる家くらい過ごしやすいものにしようと数年前に奮発して購入したのだ。今もその判断が間違っているとは思っていない。
担当者との別れ際、私はもう一度「悪いね」と断っておいた。
「ほんと、お気になさらないでください。それよりも今後ともよろしくお願いしますよ。先生」
「こちらこそ、これからもよろしく頼むよ」
車が角を曲がるまで見送り、家に入ろうとしたとき、背後から声がした。
「人気作家ぶりは健在ですね、センセ」
声のした方を見ると、そこには諸星が立っていた。
* * * *
「いい書斎じゃないですか。やっぱ憧れちゃうなぁ。またトロフィー増えたんじゃないですか?」
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