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もし諸星がデビューしたら、文体から私のゴーストライターだということがバレてしまうかもしれない。それを危惧した私は、ことごとく彼のデビューのチャンスを潰した。もちろん内緒で。それなのにどこで知ったのか数年前久しぶりに姿を見せた彼はすべてを知っており、バラされたくなかったら金を支払うように脅迫してきたのだ。それ以降、毎月彼に金を渡している。
デスクの引き出しを開けて手の感触だけで探す。確かな厚みを感じ引っ張り出したそれは、金の入った茶封筒だ。
「ちゃんと準備してるんじゃないですか」諸星は私の手から茶封筒をひったくると、その中を確認する。「足りないじゃないですか」
「そんなはずはない。いつもと同じ額をきっちり入れたはずだ」
「いつもの額はちゃんと入ってますよ。今月からもう少し頂こうと思いましてね」
「値上げの要求だと? ふざけるな!」
「それはこっちのセリフです。馬鹿な政治家どものせいで物価は上がりっぱなし。せっかくもらったお金もすぐに底をついてしまうんです」
「ただでさえ払いたくもない金を払っているんだ。私はこれ以上出す気はないぞ。足りないというなら節約すればいいだろう」
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