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眉間にしわを寄せ、厳しい口調で言う。いくら私が人気作家だとしても毎月毎月何十万も持っていかれてはたまったものではない。今でも十分渡しているのに増額しろだと? ふざけるな!
怒りで震える私に対して、諸星は余裕の笑みを浮かべていた。
「嫌ならいいんですよ? あなたの作家生命が終わるだけですから」
「クッ……。いくらだ。いくら欲しい」
諸星は希望の金額を口にした。それは豪華な食事を三回してもまだお釣りがくるほどの額だった。
「そんなに……。わかった。だがすぐには無理だ。来週まで待ってくれ」
「話が早くて助かります。ではまた来週受け取りに来ますね。これからもよろしくお願いしますよ、センセ」
懐に茶封筒をしまうと諸星は下卑た笑いを上げながら、書斎から出ていった。私はデスクチェアーに座ったまま、彼が去っていたドアを睨みつけていた。
このままでは、いつなんどきさらなる増額を要求されるかもわからない。そうでなくとも一生、あいつに寄生されて過ごすことに変わりはないというのに。
──殺すしかない、と思った。
それがこれから私が平穏に暮らしていける唯一の道なのだ。
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