いつか本当の俺を見てくれますように~たとえ身代わりだとしても、恋情に溺れて~

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 夕方五時過ぎ、インターフォンが鳴って玄関の鍵を開けると、そこには何だか懐かしいような友人の姿があって思わず(うずくま)る。 「なつめ……何だよその恰好……? 何でそんなに痩せこけてるんだよ……なぁ? どうなってるんだよ……?」  色素が薄くて繊細な面立(おもだ)ち、華奢な(りょう)さんと違って、漆黒の黒髪に一重の鋭い目つきで(たくま)しい身体つきをした(あらた)は、口を開かなければ一見すると身が(すく)むような印象を与えるけれど、とても優しい。  丈の長いTシャツ一枚で、下肢(かし)を剥き出しにして、そういえばここしばらくろくに食事も摂っていないなとぼんやりと思った。  でも、それは涼さんも同じで、日に日にやつれていく涼さんが心配で、自分のことなど(かえり)みていなかったから、他者からはそんな風に映っているのかと少しだけ驚く。 「俺なら大丈夫だよ……。それより、涼さんが大変なんだ」 「入っていいか? なつめ」  コクリと頷くと、新がスニーカーを脱いで玄関に上がって──。  その瞬間、抱きしめられた。 「あら……た……?」 「俺さぁ、なつめの親友ずっと演じてきたけどさ、お前が好きなんだ」  ──新が、俺を好き?  だって、新には散々涼さんへの秘めたる想いを相談していて、ずっと傍で慰めてくれていたじゃないか、友達として。  ずっと、俺の涼さんへの気持ちの理解者だったじゃないか。  新が俺の腕を引っ張って、リビングへと続く扉を開けたかと思えば、すぐさまソファに押し付けられる。 「新……何、冗談言ってるの……?」 「冗談じゃない」  言いながら、唇を掠めるだけの口付けが落とされて、そっと離れた。  男とキスなんて数えきれない程してきたし、特段驚くようなことでもないのだけれど、でも。  新は、俺の大切な親友で。  こんなことをするような、してはいけない相手であることは間違いないし、それに──。  今の俺は涼さんだけの俺でいなくちゃいけないから。
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