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「んっ……ゃ、……涼さっ……」
涼さんの熱い楔で繋がれて、心も繋がっていることの満たされた行為に身体は節操を知らず劣情に溺れて。
どこまでも甘く優しい涼さんは、緊張を解してくれるかのように、まるで硝子細工にでも触れるみたいに繊細な指と唇で俺だけを先に二回も達かせてくれた。
二回も吐精したとは思えないほど勢いを取り戻している脈打つ熱が、涼さんが繰り返す抽挿でビクビクと痙攣を繰り返す。
わざと俺が腰を揺するタイミングとずらすように引き抜かれて弛緩した合間に追い込むように最奥を穿たれるから、突発的な射精感が込み上げて、思わず滑らかな背中に爪を立ててしまうと、涼さんが眉宇を寄せた。
「りょっ……さっ……俺、もっ……出っ……るっ」
ずくずくと震える硬い熱に指が絡まって、俺の身体の上で荒い呼気を乱しながら「僕もっ、なつめっ……くんっ」と囁く余裕のない涼さんの声が嬉しい。
リミッターが外れたみたいに身体を揺さぶられれば、導かれるまま頂点が訪れて、少し遅れて蕩けた奥襞に涼さんの飛沫を感じて。
どこまでも満たされた言いようのない幸福感に、息も絶え絶えな呼吸を繰り返しながら、胸にもたれかかってきた涼さんを受け止める。
涼さんが俺の頬に手を添えてそっと呟いた。
「僕、早く思い出すからね? なつめくんのこと、早く思い出してもっとキミを好きになりたいんだ」
その言葉に、チリリと胸が痛む。
記憶を失う前の涼さんは俺のことなんか好きじゃなくて、ただ、姉さんの身代わりの慰み者だっただけで。
記憶を取り戻してしまったら、また俺を見てくれなくなるんじゃないか、そう思ったら怖くなってしまって。
最愛の姉さんを忘れてしまっている涼さんの姿に、きっと姉さんは悲しんでいるだろう。
涼さんにとって姉さんは忘れてはいけない人であって、思い出すことが涼さんの幸せだと思うのに。
記憶を思い出さなければ、このままずっと俺を見ていてくれれば、なんて思ってしまう俺は間違っているだろうか。
このまま、涼さんと幸せに暮らしていきたい。
そう願うことは、罪だろうか──。
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