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抽挿を繰り返されるけれど、いつまで経っても涼さんは達かなくて、そういえば先走りに濡れた感触もなくて。
やがて俺の吐き出した熱が体内で乾いていって、湿り気のなくなった枯れたそこを出入りする涼さんの屹立がズリズリと擦られる痛みに眉を顰める。
「涼……さん? どうしたんですか?」
声を掛けても涼さんはただ黙って抽挿を繰り返すのみで達することもなく、中で次第に涼さんの硬い脈が徐々に萎びていった。
そこで思った──。
涼さんは姉さんを思い出して、男の身体で達けなくなってしまったのではないだろうかと。
心は、俺に向けようと頑張ってくれているんだろうけれど、身体は正直に男を拒んでいるんじゃないだろうかと。
萎えたそれを退けていった涼さんが俺をぎゅっと抱きしめた。
「なつめ……ごめん。僕はまたなつめを傷つけたよね。こんなに……キミが好きなのに……何でだろう……」
「違う……最低なのは俺なんです。姉さんから涼さんを奪った俺なんです。涼さんから姉さんも奪っていた俺なんです。だから──」
そのまま、フラフラッと割れたフォトスタンドの破片が散らばる床にくずおれるように座り込んだ。
剥き出しになった涼さんと姉さんの写真を瞳に映したら、幸せな二人の記憶を壊した許されざる罪に、とめどなく涙が溢れてきて。
「姉さん……ごめん……。俺は最低の弟だよ。裏切り者の弟だよ。罪を償うのは涼さんじゃない、俺です。あの日、涼さんもこうやって償おうとしましたよね? 俺が代わりに償います」
言いながら、大きなガラス片をそっと拾い上げて首筋に押し当てた。
──今、俺が償うから。
姉さんも涼さんも傷つけた俺が償うから、今から姉さんのところへ逝って涼さんを奪ってしまったこと、直接謝るから。
すべての諸悪の根源は欲深い俺という存在だよ。
だから二人を傷つけた俺を許して。
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