いつか本当の俺を見てくれますように~たとえ身代わりだとしても、恋情に溺れて~

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「──で。(りょう)さんの記憶が戻ったけど、なつめを愛してくれてラブラブ幸せ満開ってわけ?」  俺はまた(あらた)に呼びつけられて、いつものハンバーガーチェーン店に来ていた。  新が面白くなさそうに頬杖を付きながら、空になったアイスコーヒーの紙コップを揺らして溜め息を吐いた。 「うん。涼さんは俺だけを愛してくれてる」  だけど──。  涼さんが記憶を取り戻して、姉さんの墓の前で愛を誓い合ってから、かれこれ二週間と少し。 「ラブラブ幸せ満開の割には顔が冴えてないけど?」  やっぱり新は親友やってただけあって、こういう時、妙に鋭かったりする。  果たして今の新との関係が親友と呼べるのかと言えば決してそうでは無いのだけれど、俺と涼さんの理解者ではある。 「うん……。まぁ、何て言うか……涼さんは確かに俺を愛してくれてるんだけど、でも──」  そこで俯くと新が俺の顔を下から覗き込むようにして「でも? どうした?」と訊き返した。 「涼さんが……俺を抱いてくれなくなっちゃった……」  新がポカンとした顔で紙コップを思わずといった感じでポトリとテーブルに落とした。 「どゆこと?」 「……俺もわかんないんだ。一緒に眠ってはくれるけど、何もしてこなくて……。それで、記憶が戻った日なんだけど、実は失敗してて……」  何に失敗したのかは聡い新にはすぐにわかったのだろう、たちまち面白そうに笑みを浮かべた。 「やっぱ涼さん、記憶が戻って男の身体に反応しなくなったとか?」  したり顔でそんなことを言ってくる新にカチンとくると共に、その問いは俺も考えていたことで──。 「やっぱり、そうなのかな……」  思わず瞳を滲ませてしまうと、新がニヤニヤしながら「欲求不満か? 俺が解消してやろうか?」などと(のたま)ってくるから。 「そんなこと言うなら新とは二度と会わない。涼さんの記憶を失わせたのは新だけど、チャンス与えてくれたのもお前だから、あんなことされたのにこうして会ってるんだけど?」  新がどこまでもふざけながら「はいはい、わかりましたー」とつまらなさそうに間延びした返事をした。  ──やっぱり涼さん、男には欲情しなくなっちゃったのかな?
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