江良と峯

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 現在、バンドグループは4組。新入部員もちょうど4人で、顧問によって各グループに一人ずつた。  幸い、エラトミネは海子を歓迎してくれた。二人ともアコギを持って歌っていたが、海子の参入によって峯がベースに持ち替え、江良がドラムをすることになった。  以来、海子の楽器のメンテナンスは峯がやっていた。 「あのテレキャスやって、弦変えたばっかやのに。ていうか、ベタベタ手垢だらけのきれいにしてやったん誰?」 「いや、ありがたく思ってましたよ? でも、だって、79年のレスジョンと交換とか言われてちょっとパニクってて」  人差し指の先をチョンと合わせながら、モゾモゾ言い訳する海子に、峯は小さく溜め息を吐いた。それを見て、江良の口元がにっこり笑った。 「そいじゃ、噂のレスジョンの音、聞かせてもらうか」 「! はい!」 「待ちに待ったけ」  江良もカホンから腰を上げた。幸い今日はアンプがある日。ギター用とベース用、それぞれ2台を4組で使い回している。  海子はレスジョンを古いPOSSアンプに繋げ、開放弦を鳴らした。  江良も峯も「おおっ......!」「太い!」と思わず身を乗り出した。海子は唇を舐め、チューニングを手早く行う。 「では歌いまっす! 新曲『お米の歌』」  先日、奏と一緒に何曲も歌った。その中で海子が作りかけていた歌がこの『お米の歌』。ラストは奏と一緒に完成させた。  一見ほのぼのとしたタイトルとは裏腹に、激しいビートを効かせながら、海子はイントロで「米米米米米!」と叫ぶ。 「どんな歌やって......」    峯は突っ込むも、ギターの重みのある迫力の音に、唾を飲み込んだ。    
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