「あっ、そう」の奏ちゃん

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「海子の動画、実はうちの会社の人が見つけたの。人材発掘してる人」  奏はギターを下ろして海子の正面に座った。海子が顔を上げると、奏はまだ真面目な顔のままだった。 「プロ目指してみない?」 「は?」  呆けた海子の目が、見る見る大きくなり、冷房で冷えているのに額に汗が滲んだ。 「いや、急に何言っとるん。そんなんいきなり言われても困るわ」 「担当者は、真面目にレッスンしてる人だろうって言ってたよ」 「ま、まあ、ばあちゃんがカラオケ教室の先生で習っとるけど」 「ギターは?」 「軽音部やから、そら、ある程度は」  奏の圧に目をキョロキョロさせながら海子は答えた。「ある程度」と言いつつ、エレキギターは父の影響で始めてから5年経っていた。父のワー⬜︎ックの尖ったギターで練習し、うまくなってきたら、カラオケ教室の伴奏でお駄賃をもらえるようになった。  月三千円の小遣いに、畑の手伝いや庭の草むしりを足して、ようやく買えたテレキャスター。この辺ではギター教室などなく、動画を見てひたすら練習してきた。 「海子の本音が知りたいの。やりたいか、そうじゃないか。今すぐに決めろって言ってるんじゃない」  海子はカラカラに乾いた口の中で唾を集めて飲み込んだ。 「あたしは、海子の歌、すごく惹かれる。最初聞いた時、負けたって思った」 「どこがやん。奏ちゃん、うますぎるし。......それに」  海子はふと、ロータイプのオープンラック、その上の写真立てを見た。 「今は、無理やわ。ちゃんと高校も卒業せんと。やりたいこともあるし」
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