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出会ったとき、あいつはガキだった。
「仕事」の集合場所は、バチバチと音だけは喧しく点滅する、街灯と呼ぶにはお粗末な電灯の下だった。黒い服を着た10代半ばのガキが、俺に気づいて片手を上げた。依頼内容は「援護」。今夜はこいつのお守りか。
貧弱な光が若い肌を浮かび上がらせた。黒縁の眼鏡の影が、白い横顔にはっきりと暗い線を引いた。
はじめ顔の半分は闇に隠されていた。こっちに顔を向けたとき、左目だけに黒のレンズを嵌め込んだ眼鏡だとわかった。その下にさらに眼帯。開いた右目は、この世の汚ねぇもんを全部見てきた目だった。
その虹彩はやわらかなブラウンで、髪はデタラメな点滅を反射して鈍く光った。
マフィアどもはあれこれ言いながらフラッシュを焚く。あまりに悪趣味だ。捕まったのは俺の落ち度だが、薄気味悪いコレクションにされることまでは同意できねぇ。
「現像してこい」
「はい!」
「よし。ボスは写真がお好みでな? お前の惨めな姿をアルベール・デュボワ殿にお見せしようとご提案したら大層気乗りしたご様子だった。ボス手ずからお前の小汚い写真を現像してくださるかもしれない。あァーお前の生涯最後の栄誉だなァ!!」
ペラペラよくしゃべると思ったら、急に声を荒げて俺が拘束されている椅子を蹴り飛ばす。吹っ飛ばされて壁に全身を打ち付けた。また無様に呻いてやる。
「だ、か、ら。デュボワ殿のご住所を知りてェんだよ!」
知るかよ。俺もあいつの逃走経路の想像なんてつかねぇよ。
「この左目は、誰よりもこの街の暗がりを見渡せる。だろ?」
あいつの冗談じみた口癖。だからあいつはお前らなんかに見つからない。
「デュボワ殿」って、それは社交界での偽名だ。あいつの名前、「セージ」すら掴めてないお前らには、無理だ。
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