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しばらくすると、東の空に満月が昇った。
ボートの上は、凍えるほど寒くなった。
船医は、月明かりに照らされた若い男の青白い顔を、じっと見ていた。
コックは、時折苦しそうに顔をしかめて、小さく唸り声を上げていた。
だが、胸は静かに上下し、しっかりと呼吸をしていた。
船医は思った。
この男は、死んだら肉を食べてくれ、と言った。
それは、立場を逆にすると、もしおれが先に死んだら、この若者はおれを食べる気なのか?
船医は知っていた・・・コックが避難する時、厨房から包丁を持ってきていることを。
「とっさに、商売道具を持ってきちゃいました」と言っていたが、とにかくコックは鋭い刃物を持っているのだ。
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