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コックが目を開くと、船医が丸々と太った鱈を抱えていた。
頬に鱈の尾鰭が触れていた。
「どうやってこの魚を?」
鱈と包丁をコックに手渡しながら、船医は言った。
「昨夜、何の気なしに診療かばんを開けてみたんだ。ああ、なんで今まで思いつかなかったのか!かばんの中に、手術用の縫合糸と針があった。糸はナイロンだし、針はちょうどいい感じに曲がっている。これで魚が釣れる、そうだろう?」
「でも、エサは?」
「革のベルトの端を、メスでちょっと切り取って針に付けたのさ!」
船医はコックが座れるように手を貸した。
「さあ、今日の献立はスシ(刺身)にしよう!」
コックは魚を慣れた手つきで三枚に下ろし、ふたりは貪るように食べた。
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