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「でも、どうして・・・」
・・・どうして、真夜中に診療かばんを開けたのか?コックは、そう尋ねようとして、やめた。
何の気なしに、だって?
そんなはずはない。
かばんには、鋭いメスが入っているのだ。
それをどう使おうとしたのか、聞くまでもないだろう。
とは言え、コック自身も夜包丁を手に、寝ている船医をじっと眺めたことが、一度や二度ではなかった。
「なんだ?」と、船医が言った。
「どうして・・・どうして、ワサビとソイソース(醤油)を持ってこなかったかな、と思って」
ボートのふたりは、はじめて笑った。
ふたりは魚を釣って生き延び、数日後に救助された。
定型文で始まる物語は、やはり平凡な結末に終わるものだ。
〜第1話 終わり〜
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