計画

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計画

 計画はシンプルだった。  連中の様子からして、女とその夫の借金の話は、上部組織には正確には報告されてはいない筈だった。あのチンピラから話が漏れた形にして内紛を誘い、時間が稼げているうちに女を逃がす。筋書きとしてはそれだけだった。  沖縄の辺野古に、喜屋武という男がいる。刑務所で知り合った男で、今は釣り人相手の民宿をしていた。ひとまず女とそこに行き、その後はタイまで逃げるつもりだった。半グレ連中は横の繋がりが強い。国内に居れば、遅かれ早かれ居場所は特定されてしまう。喜屋武は密入国のブローカーのような事をしている男だった。奴なら、連中の裏をかいて、国外に出る事も出来る。  何日か、いつもの様に仕事を続け、女の準備が整うのを待った。  その日、パート女史が紙飛行機が押し込まれている小瓶を持ち帰った。 「何これ。失礼しちゃう」  手折の鶴が姿を変えて押し込まれているのを見て女史は憤慨していたが、それは俺と女が決めていた合図だった。 「どこか飛んで行きたいって事じゃないすか」 「そんなロマンチストだっけ?」 「いや、本音ですよ」  女史から紙飛行機を受け取り、俺は眺めた。  この計画は、女が夫を裏切る事が前提条件だった。女を今の生活に縛りつけているのは、他ならぬこの夫の存在だからだ。同時に俺は、女に夫を裏切らせる事で、自分の過去への何かの証明をしたいのかもしれなかった。
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