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れんちゃん、遊ぼ。
外はまだ明るいのにお隣のようこちゃんが誘いに来た。
「お母さん、ようこちゃんと遊んでくる」
ぼくはお母さんの返事を待たず玄関を開けた。
紺に赤い花柄の浴衣を着たようこちゃんがにっこり微笑んだ。
「わぁ、かわいいね」
「うれしい」
ようこちゃんは袖をにぎって僕の前でひとまわりしてみせた。
「ようこちゃん、こんばんわ」
お母さんがようやくでてきた。
「いまからようこちゃんと夏祭りに行ってくるよ」
夏祭りの会場となった近くの公園から綿菓子の機械の音や、風船を膨らますボンベの音、焼きそばや焼きうどんを焼く鉄板の金属を擦る音が響いてくる。
「あまり遅くまで遊んじゃだめよ」
お母さんの門限はいつも厳しい。
「うん」
ぼくは素っ気なく言ってようこちゃんと夏祭りの会場へ向かった。
お母さんと話しているうちに日が暮れていた。
夜空をみあげると星々が煌めいている。
「綿菓子美味しそうね」
ようこちゃんが機械でわたがしをつくりはじめた。
みるみるピンクのわたがしが大きくなる。
「今度はれんちゃんだよ」
ぼくも挑戦してみたけどようこちゃんみたいにうまくできなかった。
少しがっかり。
「金魚すくいをしたいわ」
ようこちゃんはもう始めていた。
まるで手品のようにようこちゃんは金魚をすくう。
「すごいね」
ぼくは一匹もとれなかった。
「ブランコがあいてるよ」
ぼくたちはブランコに腰掛けた。
足首を使って軽く加速する。
夜風が頬に心地良い。
「ようこちゃんは門限うるさくない?」
「あんまりいわれたことないわ」
「いいね」
「だってれんちゃんみたいに遅くまで遊ばないもん」
「夜は夜で楽しいからつい時間のこと忘れてしまうんだ」
「わかるー」
「夜って特別な時間なのよ」
「ほんとだね」
「なんか心がオープンになるね」
「日頃言えないこともいえてしまう魔法の力があるみたいだね」
「れんちゃん、ひるまいえないこととかある」
れんはきゅうにどぎまぎした。
「急にそんなこときかれても」
「あたしはあるよ」
「どんなこと?」
「れんちゃん、もっと遊んで欲しい」
「え」
「まえはもっとお家にも遊びに来てくれたじゃない」
「そうだけど」
「あたしのこときらい?」
「そんなことないよ」
「じゃ、もっと遊びましょ」
「じゃ、砂場で追いかけっこする」
「うん」
ふたりは砂場に駆けていった。
砂まみれになるほど遊んだ。
「これからもよろしくね!」
「うん」
お月様がいつまでも二人をライトアップしてくれた。
おわり
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