恐妻と愛妻は紙一重

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 吉乃が亡くなり、信長はやや精神的に弱くなり、他の側室の元へ行く気にもなれず、消去法的な感覚で、正室のもとにいることが多くなった。  思えば、あの時期の帰蝶は、信長が知る限り、夫に対して一番優しかった。  後から考えてみれば、その優しさも、妻としての情愛からというよりは、少々腑抜けた状態の信長を立ち直らせるための帰蝶の作戦だったのかもしれないが。  ともかく、帰蝶の意外な態度に、信長の方も情にほだされた。その成果であろうか、帰蝶は婚姻以来、初めて懐妊した。  だが、そこからが帰蝶の怖いところだった。  帰蝶は、夫に対して懐妊を隠したまま、怪しげな薬を用意して、自分の腹の子を始末しようとした。  機転をきかした侍女が信長に密告したことにより、事態は未然に防がれたが。そのときも、壮大な夫婦喧嘩が繰り広げられた。
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