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「どういうつもりじゃ!このたわけが!」
怒りをあらわにする信長に対して、帰蝶はすまして言った。
「正室であるわらわが子を産めば、家中が割れ、奇妙丸の立場を脅かすことになり、後々の禍根となるやもしれませぬゆえ」
「おぬしは、己の血を引く腹の子が愛しうはないのか!」
「わらわは、腹の子一人だけの母ではなく、織田家の母にござりまする。なれば、嫡男である奇妙丸を第一に考えるは当然のこと」
「正室の子が世に生まれてきてはならぬ理由がどこにある!」
「殿は、亡きわが父に似ておりまするなあ。子に対しては、肝心なところで甘くなりまする。それが命取りになるというに」
感情的な夫に対して、妻はどこまでも冷静だった。
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