恐妻と愛妻は紙一重

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 信長がつまらない我がままで、奥方を本気で怒らせたとの噂は、奥向きだけでなく、家中の間にもあっという間に広まってしまった。  普段からの人望の差であろう。  非難は、一方的に信長に向けられ、信長の面子は丸つぶれだった。  とりわけ、美濃衆の信長に対する態度は冷ややかなものだった。  嫡男奇妙丸をはじめ、子ども達もまた、父より母の味方であり、信長は、我が子全員からも冷たい視線を向けられた。  ほとほと困り果てた信長は、義弟の新五を呼び出して、「何とかならんか」と頼み込んだ。  新五は、姉を本気で怒らせたら、どうすることもできないことをよく分かっている。  姉に怒りを鎮めるよう説得できる者といえば、母である小見の方しかいなかった。
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