恐妻と愛妻は紙一重

　その後、帰蝶の予想どおり、岳父は高政に討たれて非業の最期を遂げ、高政は信長の美濃侵攻を許すことなく、信長にとって手ごわい相手となった。
　逆に、高政が早死にし、若い龍興に父高政ほどの才覚がなかったことは、信長が帰蝶の実家である美濃を手にする遠因となった。
　娘である自分を溺愛していた父親が死んだというのに、自業自得だと言って、帰蝶は涙一つ見せることはなかった。
　すべてがお見通し、そんな帰蝶の態度が、信長にとっては、とにかく可愛げがないのだ。