恐妻と愛妻は紙一重

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 可愛くない正室であるが、粗略に扱うわけにも、別れるわけにもいかない。  実は、岳父が亡くなった時点で、帰蝶の方は、「美濃に帰っても、私は女ですから、義兄も殺しはしないでしょう。生活に困らない程度の捨扶持くらいは与えてくれるでしょうから。尼寺でのんびり余生を過ごすのも悪くありませんわね」などと、これまた可愛げのないことを言って、信長に未練を残す様子もなく、別れる覚悟を決めて、さっさと出て行く準備をしていた。  だが、信長の後ろ盾であった岳父が亡くなって、斎藤家との同盟関係もあまり意味がなくなったとはいえ、信長が、岳父から遺言のように美濃を託され、義弟である新五を保護したため、帰蝶はそのまま信長の元にとどまることになった。
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