恐妻と愛妻は紙一重

　信長の方も、弟の新五を重用しておいて、姉である帰蝶を離縁して追い出すことはできない。
　美濃は帰蝶の実家であり、美濃衆にとって主家の娘である帰蝶を粗略に扱えば、彼らが黙っているはずがなく、美濃の統治が困難となる。
　美濃衆だけではない。
　正室である帰蝶がいなくなれば、奥を束ねる者がおらず、家は立ち行かなくなり、信長に非難が殺到するのは目に見えている。
　それが分かった上での今回の壮大な夫婦喧嘩。勝敗はどちらにあるかなど、初めから分かりきっていた。