銀を知る者

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-20  一般的な話をする。魔法を扱う四種族やアイテルマノに当てはまる話である。  彼らは魔法を使うと、原理は解明されていないが体内にあるであろう魔力――魔法を扱うための自身の内に眠る源というべきか、それが減る。それは個人差があるが、大体は魔法を扱う歴に応じて大小がある。  内蔵する魔力は自分自身にしかわからない。自分自身がわかると言っても、結局は具体的な数値ではなく、なんとなくの感覚ではある。少なくとも他人には測れないものである。  魔力は使えば減る。そして回復される。  ちなみに例えば水魔法は川辺や海辺の側にいると回復しやすいと言われている。各要素の自然体の側にあれば、そこから魔力というか魔素を吸収でもしているのかもしれない、という研究がある。  さらには土魔法は、整備されていない土地、いわゆる大自然の元であれば回復しやすいらしい。火魔法であれば炎がある所。風魔法であれば綺麗な空気の所。曖昧な説も多いが、今はそういう認識が強い。  魔法師団員が1日に自身の魔力を全て使い切ったとした。ここについても個人差があるが、平均的に見ると大概は翌日中のどこかで7割方回復しているという。 「ところがニノは、それくらい回復するには3日はかかります。翌日では、大体2割程度しか回復しませんから」  それが原因でニノは下に見られていた。 「キノより下に見られて悔しいとかはありませんから。実際、魔法を使うという点ではニノはキノに及びませんでしたから」  魔法もろくに扱えぬ、使い物にならないキノのお荷物のような姉。そう言われることが辛かった。ふたりにとって互いは大切な存在なのに、周りから見れば大きな差のあるふたりであることが、嫌なのだ。 「キノにとって、良くないイメージがついて回るのが嫌なのです。それが悔しかった。ですから、修行をすることにしました。そしてそのまま、ナイショでニノも魔法師団の試験を受けようと思いました」  試験に合格することは必ず入団というわけではないそうだ。入団資格を手に入れたことになる。ニノはそれを、故郷に持って帰ろうとしているという。つまり、彼女の目的は入団ではないのである。  そうすればニノはもう、キノの足を引っ張ることもなく、お荷物でも足手まといでもない。立派なキノに並ぶ、少し後ろかもしれないが、そんな姉になれるのだ。
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