星の砂

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 風呂から上がり、居間に戻るとトウナがご飯を用意していた。 「昨日からエクトルが作り置きしてた分、美味しいよ」 「ありがとう」  芋と玉ねぎ、人参の入ったスープ。それから、柔らかそうなパン。 「パンも、エクトルが?」 「あはは、流石に買ったやつ。ミレー通りにパン屋さんあるから」  でも、頼んだらエクトルも焼けるかも、あの人料理好きだから、とぼやきながらトウナが自身の身支度を進める。 「そうだ。リルレの宿屋を教えてほしい」 「えっ」 「え?」  トウナが目を丸くしてゼナイドの方を見た。「ココじゃだめ?」 「え、いや」 「だって。父さん帰って来るまでって、いつかわかんないし。ずーっと宿屋だと、お金無くなっちゃう」 「いや、それは働きながらなんとかするつもりだったし…その、申し訳ない」 「えー! 私、ゼナイドいてくれると嬉しいな。エクトルもそうだと思うよ。お家、賑やかになるの、好きだし」  そう言われると。ゼナイドはそのありがたい言葉に甘えるしかなかった。 「お金は、何か払わせてほしい。なんというか、お礼としてできることを」 「ええ〜、いいのに。待たせるのこっちだし、うーん…じゃあ…食費? お願いしようかな」 「わかった、ありがとう。本当に助かる」  トウナが嬉しそうな表情を見せて、お風呂場へ向かおうとした時、扉が叩かれる。「リヤです」 「リヤさん?」トウナが駆け足で扉を開けに行く。  そこには昨日少し見覚えのある、飲み物を振る舞ってくれたリヤという青年が、疲れ切って、曇った表情を浮かべていた。 「あ、トウナ…えと、エクトルは」 「寝てる」 「そうだよな…じゃあ、伝えてほしいんだけど」  今日、酒場へ働きに出ることができない、ということだった。どうにも子供の体調が悪いらしい。 「ここ数日、赤い太陽の時に高い熱を出すんだ。昨日からは、1日中具合悪そうで」 「わかった。イーリアさんとしっかり大事にしてあげて」 「ありがとう…一応俺から、ローハさんには伝えておいたんだ。ローハさんの腰が治ってから、店は再開させると思う」 「じゃあエクトル、少しの間、お休みだね」 「ああ…流石にエクトルでも、ひとりじゃ難しいだろうし」  エクトルが働きに行く酒場の人手不足が目に見えてわかる。子供の体調も心配だ。そんな中のリヤは、いろいろなことに打ちのめされているようだった。 「人手が、足りないのなら」  ゼナイドは、おずおずと右手を挙げる。「私で良ければ、手伝わせてくれないか。昨日の恩返しと思って」
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