星の砂

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 青い太陽が高く昇った時、エクトルは目を覚ました。今日と明日のトウナのご飯を作らなければ、とゆっくり身体を起こす。  自室から出て、大あくびをしながら居間に入る。「おはよう」 「ふぇ?!」思わず変な声が出た。 「ごめん。驚かせてしまった」 「あ、いや、俺が忘れてた。おはよう」  少し恥ずかしさを感じながら、ゼナイドが何かを読んでいることに気付く。なんとなく見覚えがあると思えば、酒場で出す飲み物の作り方を、ローハが簡単に書き記したものだった。「実は、」  トウナに、ディリガが帰ってくるまで宿屋代わりにこの家で過ごしていいこと、リヤの子供の体調が治るまでリヤは働きに出られないこと、リヤの代わりにゼナイドが働くのはどうか話になったこと。 「エクトルにとっても迷惑でなければ是非」 「全然有り難いけど、店については一応ローハに聞いてみるか」 「リヤが帰りに言ってくれるらしい。問題なければ、店にいると」 「いやまた結局無理して来てもらうんじゃ意味ねぇ って…アンタに言っても仕方ねぇや」  それからトウナが帰って来て、もう一度ゼナイドが髪を洗う。かなりさらさらで綺麗に整ったところで、短い星の時、ゼナイドとエクトルは酒場へ向かう。 「恩返しなぁ…別にそんな気にしなくていいんだぜ」 「そういうわけには。私は本当に助かったから、受け取るままではいられない。そういう性分だ」  歩いていると酒場の明かりがついていることに気付く。ローハに違いない。ゼナイドとエクトルは顔を見合わせて、思わず微笑んだ。 「いやあ、ありがたいねえ。気の良い旅人さん。お言葉に甘えさせてもらいたい。それで、お給料についてなんだが…」  ゼナイドは腰をさするローハを支えながら、客席の隅へ向かう。そこで、リヤの代わりに働く期間の報酬についてと、仕事内容についてを簡単に説明していた。時々聞こえてくる声に内心頷きながら、エクトルは仕込みを進める。 「リヤより俺が先に戻ってきても、リヤが来るまではいてほしい」 「もちろんです」  聞こえた迷いのない答えのゼナイドの言葉に、エクトルは少しの嬉しさを感じたのは内緒にしておくことにした。  それから話し終えたようで、ゼナイドはローハに一礼してからエクトルの元へやって来る。ローハは腰をさすりながら、家へ帰るようだった。「ああそうだ。エクトル、今日トウナが薬持ってきてくれたよ。またお礼言っといてくれ、ありがとな」  赤い太陽が昇る。店を回転すれば、昨日と同じように賑やかになった。  エクトルやリヤと違い、ゼナイドは町民の客を把握できない。彼女は簡単に注文を書く紙にマークを付けた。同じマークを書いた紙を客に持ってもらい、マークで持っていく場所を判断できるようにしている。  その様子を見ながら、エクトルは次新しく入ってきた人にはそういうやり方をしてみようと思った。自分もリヤも、客の顔とある程度同じの注文内容を覚えるまでに随分苦労した記憶があるからだ。  慌ただしくも、初めてにしてはあまりにもスムーズなゼナイドの働きぶりあってか、エクトルの想像より随分落ち着いて営業ができた。 「びっくりした。正直もっとぐだぐだするかと思ってた」 「皆が優しいからやりやすかったよ」  ゼナイドは、これまで立ち寄った町や村でも同じように手伝いをしていたことはある。場所によってはメモを隠されたり入れ替えられたりで、うまくできないこともあった。 「しばらく頼むな」 「任せてくれ」
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