銀を知る者

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-21  故郷ガーディンドを飛び出したニノは、ゲノスの里グランオースへ向かった。  純血のゲノスに受け入れられるかというところに不安はあったものの、彼らから土魔法の使い方を改めて教わろうと思ったのだ。  それに里には祖母がいる。父からそのことを聞いていたので、祖母に会う目的も生まれた。  幾度も獣や魔獣に遭遇し、なんとか倒し、魔力が底をつき、そんな中道を進めることもできず何日か野宿。と言っても、ある程度回復した魔力で簡易的な居住スペースを作ったのだが。 「ちょっと待てニノ、凄いことをしていないか」 「何がでしょう?」 「いや、休む時に、スペースって」 「屋根と壁がないと色々凌げませんから、簡単なものですから」 「そうか…」 「確かに、魔力回復の時間はよりかかりますが…どうせ休むなら、と言った感じですから」  恐らくこういうところがキノにとって、姉を誇りに思う部分なのであろう。ニノも十分自信を持っていいはずだが、魔力回復の速度への劣等感はなかなか大きいようだ。  ゲノスの里グランオースは広大で力強い、地下に広がる世界だった。ニノはそこで祖母と出会い、里の皆に受け入れられ、土魔法の指導をしてもらった。  純血のゲノスにとってもニノの土魔法は特殊なようだったが、やはり血縁か祖母―――ユノも近しい能力であった。  ユノの土魔法はニノのように植物とまではいかないが、地上地下問わず、土で様々なものを形作ることができた。一般的な土魔法は主に地表の変形といったものが多い。変形以上のなにか具体的なものを作り上げることができる者は少なかった。 「ユノさまはルフテのような、ゼラキの民の隠れ家を作ることに一役買ったようですから。それで、ユノさまを経由してルフテと知り合いました」  ゼラキの民は、四種族の一部の者達と静かに関わり合っている。このことは本来口外しては行けないものであるが、ゼナイドはルフテと出会っているからと、少し小声気味に教えてくれた。  ゲノスの一族でルフテ達を知る者は、ユノと土の魔女、つまりゲノスの始祖の能力を継ぐ個体であるユリエルのふたりだった。 「あれ…? 本来ニノ、ゼナイドさんへはユリエルさまとルフテの会話を聞いて、お願いしたいことがあったのです。それを言いたかったのに、ニノったら、ああ、全然違うお話から展開してしまいましたから…」 「……辿り着けたのなら、いいんじゃないか?」
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