星の砂

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「あいつ! シュエータですので!」 「ヤバいやつか!?」 「いえ、食用として非常にいい鳥肉ですので! エクトルさん! 今晩シュエータ料理で腕をふるってください!」 「は!?」  ひとまずきキノとエクトルは、双方逆方向へ逃げる。鳥獣改めシュエータはあいも変わらず直進し、木にぶつかった。 「あいつ、意外とどんくさいな?!」 「シュエータは知能はそんなに高くありません。先程のように、基本的に決めた場所に一直線ですので!」  それに反抗するかのようにシュエータが一鳴きして、ゼナイド、エクトル、キノの誰から狙おうかと探すように頭を動かす。 「さあ! 今晩のご飯ですので! 皆様でいただきましょう!」  キノは何も気にしない様子で、とにかくシュエータを食べることができるかもしれないという可能性に喜び、シュエータ付近の地面を隆起させた。足場が動いたことに驚いたシュエータは、動く足場から逃れようと暴れ出す。 「翼と足の動きを封じましょう!」  シュエータの足場の地面が蠢き、シュエータの片脚を捕らえた。しかし片脚では動きを抑えられず、シュエータは力づくで土の足枷を砕いた。 「ぐぅ〜このあたりは水辺が近いので、どうも緩いので…!」  キノがエクトルに顔を向ける。「エクトルさん!」 「え!? いやでも「スナクイリスを捕まえたのと要領は同じですので!」  エクトルの魔法は、獣に対して使ったことはない。生き物に対して使ったのは、小鳥を試しに捕まえた時が初めてだった。  キノは地面をゆらゆらさせて、シュエータから足場の自由を奪う。ゼナイドは諦めてとどめを刺すことをに意識を切り替え、シュエータの首を狙うが、それにしては悪足掻く翼が邪魔をする。  翼の動きを止めることができれば、身動きの取れないシュエータの首を落とすことができる。そうすれば、美味しいご飯をエクトルが作る。  いつの間にか思考をご飯に奪われている自分に思わず笑いがこみ上げてくる。「やってみるしかねぇな…!」  手を、ぐんぐん動く翼に向ける。右側は対して動かないので気にしない。元気そうな左の翼の全体を凍らせたら動きは止まるか? それとも、いっそ貫くか?  エクトルは『翼を貫く』という発想をしてしまった自分を少し軽蔑した。凍らせるなら、シュエータ自身を凍らせてしまえばいい。  頭の中ではイメージができた。氷晶に捕らわれた、滑稽な姿をしたシュエータ。ゼナイドが首を落とすことなく仕留めることができる。スナクイリスと、要領は同じ。  エクトルのシュエータ丸ごと凍結作戦は叶わなかった。スナクイリスの時のような、イメージしていたら反映されている、ということが起きない。  シュエータは相変わらず暴れているし、それにゼナイドは苦戦している。キノは少し息が上がっている。エクトルも息が上がっていた。  耳の奥がドクドクと鳴っている。手先が、胸が脈打つ鼓動を強く感じる。かっと身体が熱くなる。  ―――なんでできない?  そう思った時、シュエータの所々がなにか反射するように光ることに気付く。それはシュエータの動きにあわせて落ちて砕ける。氷だ。シュエータのあちこちに氷が発現していた。  エクトルのイメージは、反映されていないわけではなかった。ただ、氷として反映できた質量が、イメージからは程遠いものだった。エクトルが持っていた量の氷は、とてもシュエータの動きを止められるものではなかった。  氷の量はどうやったら増える? いや、イメージはできている。氷漬けのシュエータがいるのだから。スナクイリスにはできて、何故シュエータはできない。スナクイリスのように、捕らえるこ―――
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