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エクトルはあまりにもフラフラして歩く以前の問題があった。結局リルレまでゼナイドにおぶられリルレまで、リルレからは多少回復したようで、なんとか自力で歩いた。
薬屋に寄って集めた星の砂を渡し、魔力切れに効く薬と太陽病に効く薬をそれぞれ作ってもらう。
「エクトル、君は今日は帰ったほうがいい」
「キノでもお手伝いできますか?」
「ローハがいるから、聞いてみよう」
「いや…行くよ」
「やめてくれ「だめですので」」
太陽病の薬を持って、ゼナイドとキノはローハの酒場へ向かう。エクトルは、薬屋の店主に何故か家まで送ってもらった。
「おかえり? うわ、エクトルぼろぼろ…」
普段は見ないトウナの驚き顔で出迎えられる。薬屋の店主に「今日は癒やされるのも程々にね」と言われ、思わず「違うわ!」と叫んで否定した。
店主が帰ってから、エクトルはその場に力無く座り込んだ。「せめて部屋まで頑張ろう?」
トウナになんとか立たせられ、自室に辿り着く。投げられるように寝台へ寝転ばされた。「ちょっと雑じゃない? 俺の扱い」
「どこ行ってたの? そんなぼろぼろになることして」
「いろいろあった」
「わかんないよ」
珍しく、トウナが話を聞いてくると感じた。流石に日常からかけ離れた廃れ具体だからだろうか。しかし、一度ある旅の帰りのディリガが、今のエクトルの比にできないほどぼろぼろになっていた時は、トウナはいつも通りだった。
「なに、怒ってる?」
「…私、ちょっとイヤだった。エクトルが、街の外出るの」
トウナが怒ることは珍しい。
「いくらリルレは平和だからって。街の外は危険。ゼナイドやキノさんは慣れてるけど、エクトルは違う。場違いだったよ」
エクトルは、何も言い返せなかった。
実際シュエータとの戦いは、エクトルがいなければ、旅の中の戦闘経験者のふたりだけであれば、うまいこと戦えていたと思う。ゼナイドも、キノも、エクトルがいたからこその戦い方をしていたのだから。
同時に、エクトルがひとりでスナクイリスをこっそり捕まえていた時に、シュエータにあわなくて良かったと心の底から思う。
もしあの時、出くわしたのがゼナイドではなく、エクトルであったなら。応戦する間もなくやられていたはずだ。エクトルの魔法は、シュエータには意味がなかったのだから。
「私、エクトルに危険な目、あってほしくない。あなたは昔、十分危険な目にあってるんだから」
エクトルがひとり、自分の行動に反省している中、トウナは泣きそうな表情をしていた。
魔力切れの影響か、薬の影響か、エクトルの意識は遠のく。トウナの一言を拾えなかった。
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