星の砂

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「嬢ちゃん、随分珍しい髪色してんな、どっから来てんだ?」「ひとりで? 大したもんだなァ」「俺達よ、旅人サンの話、いろいろ聞くのが好きでよ…」  早速客中へ歓迎されたようだった。銀髪の旅人は随分美しい顔立ちをしている。それもあってか男ばかりの客達は少し、いや、かなり嬉しそうな表情ばかりである。 「リヤ! なんか、うめぇジュースでも寄越してくれや。ゼナイドちゃん、酒が飲めないらしいから。俺にツケとけ!」 「そんな。それは申し訳ない」 「イイんだよ! 歓迎の意と思って、さあ何食べよう? ここの料理は美味いぞう〜?」 「そういってツケいくらたまってると思ってんですか〜?」 「今度返す!」 「なら私が」 「ゼナイドちゃんからは「旅人さんからは」いらない!」  エクトル自身の経験からも言えるが、リルレの町民は、外部の者へ優しく、あたたかい。エクトルが、ディリガに連れられて始めてリルレへ来た時をうっすら思い出す。 「ディリガが引き取るって? 大丈夫かよ〜」 「トウナにとっていいんじゃねぇか? おっさんとふたりよりは、同世代ひとりいても」 「ははは! ディリガよりしっかりしてそうだしな」  トウナの母、つまりディリガの妻は、ディリガの研究熱心が過ぎる態度にしびれを切らして出て行ったらしい。トウナは、父の研究話が嫌いではないという理由で、ディリガの元に残った。  実際それから12年のうち、3年ほど全くディリガが帰って来ないことがあった。エクトルがいるからだと思うのだが、娘を持つ男としてはいかがなものかとは思う。  しかしエクトルもトウナも、ディリガのことは好きだった。研究、というか実際見てきたことを話すディリガの姿は、少年のようでとても楽しそうだった。  エクトルはその話を聞いていると、少しでも世界をしれた気がして嬉しかった。同時に憧れも抱く。 「エクトル! なんか、飯!」 「雑だなオイ」  とりあえず、今ある残りの材料からできる料理を考える。メニューにはないものだが、別に良かった。エクトルなりの、歓迎の意ということにしておこう。  さっと葉野菜たちを炒めながら、肉を別で焼く。同時にドリア作成に手をかける。野菜の火加減をみているとき、店の裏口が開く音がした。  振り返るとリヤの妻イーリアが、赤ん坊といっしょにいた。
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