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赤い太陽が落ちかける頃には、客の騒ぎも落ち着き、エクトルは片付けに専念できた。ゼナイドが皿洗いをしてくれるのもありがたかった。
「ディリガを探してるんだっけ?」
「ああ。君はディリガと暮らしている、らしいが」
「正確には、ディリガの家に置いてもらってるだけなんだけど」
水が滴る皿やコップを丁寧に並べ、ゼナイドは手を拭きながら、厨房から出て、空いた皿を回収し始めた。行動に迷いがない。これまでの旅の中でも似たようなことをしてきたのだろう。
それから赤い太陽が落ちきる。ゼナイド以外の客はみんな帰っていった。ゼナイドは手際よく拭いた皿を食器棚に並べてくれた。
「なんでディリガを?」
「ディリガは、この地の大陸に伝わる文化を研究している、と聞いた」
「そうだな。今もどっか行ったよ」
「今はいないのか」
「そうなる。行き先を教えてもらってないから、いつ帰ってくるかもわかんねぇし…」
明らかにがっかりした雰囲気が漂う。「い、急ぎか?」
「いや。急ぎではないが…早く知りたくて」
「何を?」
「銀の民」
大陸に伝わる、太古からこの地に暮らす者達。銀色の髪、銀色の瞳、銀色の肌、銀色の血を持つ、とどこまでが嘘で本当かわからないことばかりの、謎に包まれた存在。
「血の色…銀なのか」
「いや、私は生粋の銀の民ではない。父親が違うから」
「じゃあ、母親は…」
「覚えていないんだ。小さい頃に別れたきりで」
「それは、銀の幻獣になったから?」
ゼナイドの動きが止まった。エクトルは少しして「悪い気にするな」と早口でなかったことにしようとした。
「―――銀の民は、銀の幻獣になるのだろうか」
残りの皿を拭き始めて、ゼナイドは続ける。
「私はそれを知りたい」
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