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ディリガに会うまでは、とゼナイドはリルレの街にとどまることにした。
リルレに来たのがついさっきで、閉まっていたために宿屋を借りることができず、今日は野宿でなんとかする、と言い出す。
エクトルはなんとか家へ連れて行くことで説得し、今だけ、トウナが起きてくれていることを祈るばかりだった。
長い星の時は、短い星の時とは違った星空模様が広がる。星明かりの下、ゼナイドとエクトルは小走りで家へ向かっていた。
「ディリガがいない時は、君は一人暮らしなのか」
「エクトルな。俺。えーっと、ディリガの娘さんがいる。トウナって」
「そうか。私が行って大丈夫か?」
「俺が説得するから大丈夫。悪いやつじゃないし。…あ、うん、アイツは妹みたいなもんだから」
家について、ドアを開けると「おかえり」と真っ先に声が聞こえた。やはり起きていたようだった。
「トウナ、ひとり泊めてもいいか? 旅人さんなんだ」
エクトルに誘導されて、ゼナイドが入口の前に立つ。「ゼナイド…といいます。無理を言って申し訳ないが、青が登る時までで…」
「旅人さんお持ち帰り…!」
「言い方なぁ…」
「冗談だよ」
トウナは嫌がる素振り一つ見せず、ゼナイドを中へ招き入れた。「ありがとう。助かる」
「ゼナイドって言うのね。綺麗。旅で疲れてるだろうし、もう寝ようか。明日、シャワー浴びよう! 髪、とても綺麗だから」
トウナはゼナイドを気に入ったようで、すぐいろいろ構い出していた。妹ができたような気分なのだろうか。
ゼナイドは酒が飲めないと言っていたが、それは好みではなく、年齢的な原因だろうと感じた。
お酒は20歳になってから、というが旅人はほとんど守るイメージはない。ゼナイドはかなり真面目なのだろう。なんとなく、エクトルやトウナよりは歳が下だと予想していた。
「歳は…18」
「わぁ。私、20だよ。お姉さんだね」
「予想通り」
「何言ってるの?」
「なんでもない」
ゼナイドはトウナの部屋ですぐに眠りにつく。やはり疲れが溜まっていたようだ。
ゼナイドの荷物は相当少ないようで、手に持つ随分頑丈そうな鞘に収まる細身の剣と、空の袋、路銀の入った袋だけだった。
「銀髪ってことら…銀の民?」
「母親だけらしい。ハーフって感じか」
「復讐、じゃないよね?」
「は?」
エクトルの故郷は、銀色の龍が起こしたとされる大嵐で、山の土砂崩れが引き起こされ、谷にあったために消え去った。
銀色の龍は銀の民と関係している、というのが一般的な認識で、基本的には謎に包まれた存在である。
「アホか。さっき、店の片付け手伝わせちゃってさ」
「ローハさん、腰痛めちゃったんだっけ。明日腰痛の薬、持っていこうかな」
「そうしてあげて」
「リヤさんは?」
「リヤんとこはこないだお子ちゃん産まれたから。しかも今日、熱出してたし」
「大変だなあ」
それからエクトルとトウナも眠りについた。
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