もし話せたら

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もし話せたら

妊娠8週目。 産婦人科にて、私は足を広げて椅子に座りつつ、超音波検査を受ける。 画面には、小さな頭と手ができた赤ちゃんが映っている。 心拍が確認でき目頭が熱くなる。 「これからもよろしくね。」 感極まって呟いたら 「えぇ!?」 と画面越しに赤ちゃんが喋った! 「やーよ。 だってあなた薬飲んでたじゃない。」 私はサッと血の気が引いた。 ずっと気にしていることがある。 妊娠が分かる6週目前までたくさんの薬を飲んで生活していた。 睡眠薬、精神安定剤、整腸剤などなど。 飲まないと不安で仕事が手につかない。 主治医には妊娠を希望していることは事前に話していた。 妊娠検査薬で判定がでたら、病院に連絡し飲まない方が良い薬は選別するから飲み続けて良いと言われていた。 だがもっと早く妊娠検査薬を試していれば違っていたかもしれない。 「…でも」 赤ちゃんの声が聞こえてハッと顔を上げて超音波検査の画面を見つめる。 「アタシの母親はあなたしかいないんだから、これからは気をつけてよね」 赤ちゃんからの母親認定に号泣する私。 「うん、これから気をつけるわ。 だからこれからもよろしくね、私の赤ちゃん。」 画面越しに赤ちゃんの小さな手が振られた。
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