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本音を露わにした大隈に対し、大久保は冷徹に言い返した。
「罪を憎んで、人を憎まずか。肥前は甘い。だから、出遅れたのだ」
江藤は、新政府に出仕したばかりの頃、同郷の暴漢に襲われて大怪我を負ったことがあった。
これに対し、江藤は、罪人の言い分をよくよく聞いたうえで、慎重で公平な裁きを言い渡すようかつての主君である鍋島直正に申し入れた。
残念ながら、江藤の進言は聞き入れられず、直正はすぐさま断罪に処したのだが。
その直正は、保守的で日和見的だと言われがちなところもあったが、もともとは、温厚で寛大な人であった。
そうであればこそ、肥前では、志士達に対して薩長ほど苛烈な弾圧はなされず、志士達はひとまず命ながらえて、何とか己の思うことができたのだ。
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