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第十四話:見つけた課題
パープルナイトを倒したソーラレンジャー。
だが、戦いに勝って勝利を喜ぶ。
と言う気分には、戦隊のレッドこと昇はなれなかった。
「うへえ、何かやっちまった感の方が強いぜ」
必殺技を叩き込んだ、それで敵は消えた。
自分達以外には誰もいない岩山で呟く昇。
だが、昇には戦って勝ったと言う実感がなかった。
「私達全員の力を、バズーカで叩き込みましたから勝ったはずです」
ソーラが立ちすくむ昇に寄り添い、やさしく語りかける。
「ふむ、昇殿のお気持ちも何となく共感できますな」
青玉も昇に近づく。
「いっその事、巨大戦で倒せばとも思いますね」
「モモちゃん、考え過ぎパオ♪ 甦ったら、又やっつけるパオ♪」
首をかしげるモモに、笑顔で語りかけるナパティ。
「取り敢えず、俺の心の為に手を合わせておくか」
資料館で素性らしきものも見たし、哀れさも感じたので祈る。
「私達以外の女の事を思われるのは悔しいですが」
ソーラは悔しがりつつ、昇に合わせる。
「推しの優しさが尊いでござる」
青玉は昇に手を合わせた。
「きちんと生まれ変わるパオ、また敵として来たなら成敗パオ」
ナパティも手を合わせる。
「ウキウキな来世を過ごして下さい」
モモも祈る。
「皆、付き合ってくれてありがとうな♪」
昇が仲間達に礼を言う。
「当然です、私達は昇様ファーストですから」
ソーラが胸を張って告げる。
「昇殿、拙者にも祈りを下され~♪」
「青玉、ずるいパオ!」
「そうですよ、ウキウキじゃないです!」
「抜け駆けは禁止ですよ?」
火花を散らすソーラ達に昇が溜息を吐く。
「じゃあ皆に祈るよ、これからも宜しくお願いします」
昇が仲間達に向けて手を合わせる。
すると、昇の体から仲間達の色の光が出てそれぞれに当たる。
「は~~~~~っ♪ 至福ですっ♪」
ソーラは高揚した笑顔を見せる。
「じ、自分で言っておいて尊さで鼻血が!」
青玉は鼻血を吹いた。
「癒されるパオ~♪」
「ウキウキです~♪」
ナパティとモモも喜んでいた。
「え? これ、何かの機能?」
昇は自分から光が出た事に驚いた。
「問題ありません、私達へのご褒美です」
「いや、何か隠してない?」
ソーラに問いただす昇。
「大丈夫パオ、私達が昇君にしてる事と同じパオ♪」
「あ、ナパティからこっちに何か光が来た。 何か気持ちいい」
ナパティが説明ついでに実演する。
「拙者からもどうぞ♪」
「青玉、そっちのは何かお湯みたいなビームが!」
「ウキウキなビームをどうぞ♪」
「モモからも、何かバナナ味のビームが来た!」
「私からもどうぞ、愛の光です♪」
「うおっ! ソーラのビームは何だか暖かい?」
仲間達からビームを当てられた昇。
ビームの効果か不明だが、取り敢えず気分は落ち着いた。
「お帰りなさいですゾ~♪」
船に戻るとガーネが迎えてくれた。
「それじゃあ、オノゴロへ戻ろうか?」
昇が仲間達に告げる、学校もあるし街の防衛もある。
「そうですね、新たな魔の手が忍び寄っているかもですし」
「我々はまだまだご当地ヒーローでござる故」
「皆を実家に案内したかったパオ」
「それなら私もですよ」
仲間達がそれぞれの想いを告げる。
「まあ、縁は繋がりましたしまた会えますゾ~♪」
「そうですね、お世話になりました」
「娘婿の為ですゾ~♪ 加護を与えますゾ~♪」
ガーネが昇をハグし、金色に輝く右手で頭を撫でる。
「あ、ありがとうございます」
「応援してますゾ~♪」
昇は魂に何か力が宿った感じを覚えた。
「ソーラ殿? あれは宜しいので?」
「問題ありません、昇様が受け入れられた証です」
「パパ、ありがとうパオ~♪」
「昇さん、次は私の実家にも行きましょう♪」
「えっと、何か色々言われても困るんだが?」
まだまだ仲間達に振り回される昇であった。
ガーネの船で昇達はオノゴロへと帰還出来た。
「ふう、基地の居心地も何よりだぜ♪」
「ええ、ここが我が家です♪」
「湖の中も心地良いですぞ♪」
「船だけじゃなく、次は城に案内するパオ♪」
「私の実家の山も良いですよ♪」
ソーラベースの会議室で駄弁る昇達。
調査のはずが、対象と一戦交えて撃破してしまった。
「敵の事はわからなかったけど、俺はまだまだ弱いって事はわかった」
昇はパープルナイトとの戦いでそう感じた。
与えられた力も、まだまだしっかりと使いこなせていない。
精神も、敵にビビったり怒りに飲み込まれたりと至らない。
敵を知る事は出来なかったが、少しは己を知れた気がした昇。
「そう言うわけで、勇者を目指して心技体を鍛えて行きたいと思う」
仲間達を見回して昇は告げた。
「己を高めるのも結構ですが、拙者達も頼って下され」
青玉が昇に告げる。
「そうですよ、私達は仲間で家族なんですから♪」
「モモちゃんの言う通りパオ♪」
「ええ、私達皆で高みを目指して参りましょう」
「そうだよな、俺達は戦隊だもんな♪」
自分は一人ではない、昇の心を仲間の言葉が癒した。
翌日。
「あ~っ♪ 学校の教室って、何か日常感がする♪」
「そりゃ、学生の日常は学校にあるからね」
「久しぶり、最強剣士君」
「コジュウロウで良いよ、称号呼びは何かね」
「ああ、変身してないのにヒーローネーム呼びと一緒か」
「そうそう、そっちもレッド呼びとかは変だろ♪」
「まあね」
久しぶりに登校した昇に、黒髪の最強剣士の美少年が語し掛けて来た。
転生者でもあるコジュウロウとは、普通に付き合えた。
「久しぶりだな、友よ♪」
「カイルも久しぶり♪」
次に昇の元に来て語り来たのはカイル。
「どうした、何か経験でも積んだか?」
「ああ、ちょとヤバい敵と戦って来た」
「良い事だ、心身を鍛えて行くと良い」
微笑み合う昇とカイル。
「君ら、出会った頃から仲が良いよね?」
「まあな、こいつの魂はクラスの男子の中では一番好ましい」
「人気だねえ、レッド君」
カイルは堂々と笑い、コジュウロウは苦笑い。
男子の友人も増えて来た昇であった。
それぞれのヒロイン達は、彼らの話を邪魔をしないように席を外していた。
放課後。
室内の剣道場に、昇はカイルとコジュウロウそして夕陽先生といた。
「コジュウロウ君から話は聞きました、心の鍛錬と言えば剣です」
昇達は剣道着で。竹刀を脇に置き先生の前に正座している。
「天照寺君は、迷いが深いと聞き特別な竹刀を用意しました」
「オノゴロ流の竹刀は良いよ♪」
「うむ、こたえるぞ昇よ」
カイルとコジュウロウは、竹刀の事を知っているらしい。
「では、皆さん竹刀を持って見ましょう」
先生の言葉に昇はダンベルの様な重さの竹刀を何とか持ち上げた。
「先生、竹刀が重いのは俺の心と関係しているんでしょうか?」
「ええ、その竹刀はあなたの迷いや悩みが重いほど重さを増します」
先生が微笑む。
昇は先生の言葉で気分が重くなる。
すると、自分が持つ竹刀も重くなり腕が下がった。
「昇よ、心を強く持つのだ!」
「竹刀は君の心に応えてくれる!」
コジュウロウとカイルが昇を励ます。
「物理的にメンタルを鍛えろってか? やってやる!」
気合いを出して竹刀を何とか中段に構えられた昇。
「はい、竹刀を構えられましたね♪ それでは素振り開始です♪」
「俺達も付き合うぞ、昇!」
「この修行を言い出したのは僕だしね」
「良い友情ですね、あなた達の竹刀には慢心の戒めが付与してあります」
こうして、昇はカイル達と地獄の素振り特訓を行った。
「くっ、この俺がたかが素振りで!」
「ぐあ、調子に乗っててごめんなさい!」
「ふ、二人共! な、悩んでる場合じゃないけれど重い!」
昇達三人は必死に素振りを行い、物理的に己の心を鍛えた。
「無心になれば竹刀は軽くなりますが、思考放棄はいけませんよ♪」
夕陽先生は、昇達の心が逃げる事を許さなかった。
昇達三人は、汗だくになり道場の床に倒れる。
「何だろう、悩み何ておこがましいって教えか?」
「わからんが、我が傲慢はすさまじかったようだ」
「二人とも、お疲れ様」
昇達三人は、友情を深めた。
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