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第十話:戦隊、悪の組織と邂逅する
「げげえっ! 五色の五人組、てめえらはもしやっ!」
「ヤバいぜ兄貴、ここは奴らの縄張りだっ!」
「ちくしょう、勇者が恐くて悪党やれるかっ!」
ガラも人相も素行も悪い抜き身の剣や槍で武装した山賊達。
夜の山中で山賊達が出会ったのは、五色の仮面の戦士達であった。
「変身勇者隊ソーラレンジャーだ!」
レッドが代表して名乗る、仲間達は戦いの構えを取った。
レッドはマスクのテレパシー機能で、相手が動きを見せてからと指示。
一応人間が相手なので、手加減のセーフモードでと方針を伝える。
仲間達は頷きでレッドの指示に従うと同意した。
悪党にも意地があると、ソーラレンジャーに襲い掛かる山賊達。
「度し難い連中パオ、どすこいパオ~ッ!」
グリーンが思い切り足踏みをすれば、大地が揺れて敵の足が止まる。
「我らが領土を荒らす不届き者、成敗でござるっ!」
ブルーが山賊達を倒そうと走る。
「ブルーさん、手加減ですよ!」
ピンクがブルーに叫ぶ。
「息の根を止めても問題ありませんが、報酬が下がります」
ゴールドも叫ぶ、殺さないのは優しさからではなかった。
オノゴロを含むテラランドでは、人権は皆に平等に与えられていない。
特に司法の裁きを恐れず従うを良しとしない犯罪者には過酷だ。
ソーラレンジャーと対決している山賊達は、人権がない存在の代表。
司法職である勇者や冒険者に犯罪狩人等には、処刑権が認められていた。
だが、山賊や盗賊は殺してしまうと一人頭数百円の賞金しかもらえない。
生け捕りだと一人頭三千円ほどの賞金額と差が大きすぎる。
なのでソーラレンジャー達は、少しでも資金を稼ぐために生け捕りを目指して戦っていた。
「山賊や盗賊に人権はないが、報酬の為の配慮はいるって面倒だなっ!」
レッドがぼやく。
ゴールドから聞いたテラランドの制度を思い出したからだ。
「そんな時は、使っても死なない石化魔法ですよ♪」
ピンクが専用武器の長い棒で山賊の一人の頭を叩けば、賊の一人は全身が石になる。
「さあ、大人しく縛に着くなら法の裁きがもらえるぞ?」
「うるせえ、こちとら死罪確定なんじゃくたばれっ!」
「ブルーッ! 生け捕りで頼む!」
「承知♪ 水鉄砲っ!」
ブルーが手から高圧の水流を放ち、襲って来た賊の剣を粉砕し吹き飛ばす。
賊は吹き飛ばされ、木にぶつかりダウンした。
「ちきしょう、やりやがったな! 赤い奴から、くたばれっ!」
「山賊なんて人の道外してるくせに、やかましいっ!」
「ぎゃあっ!」
レッドの中段突きが決まり、賊は体をくの字に曲げて気絶した。
山賊達を制圧すると、ピンクが賊を全員石化させて集める。
「石化で捕まえたから、だいたい一万五千ゴロンかな?」
レッドが石になった山賊達を数えて金額を計算する。
「では、退治の証をペタリ。この者達、山賊につき成敗っと♪」
最後はゴールドが、自分達が討伐した証拠のシールを山賊達の頭に張り付けて転送魔法で官憲へと転送した。
転送されて来た官憲の方で、石化解除の魔法で手間取るのは気にしない。
「よし、後片付けの開始だな♪」
「我らが愛の巣の庭ゆえ、綺麗にせねばですからな♪」
「自然環境は大事パオ~♪」
「山賊の割には、金品とかもってなかったですね?」
「恐らく、他の勇者が回収したのでしょう」
山賊退治を終え、周囲の片付けに入るソーラレンジャー。
ソーラレンジャー達は魔法で、周囲の木などを回復させた。
「ふう、山も綺麗になったぜ♪」
「今宵はこれで上がりですな♪」
「帰ったら、ラッシーを作るパオ♪」
「バナナで栄養補給です♪」
「皆さん、それでは帰りましょう♪」
ゴールドの元にメンバーが集う。
「頼むぜ、ゴールド♪」
「お任せ下さい、転送魔法発動♪」
ゴールドが天に向けて片手を突き上げると、戦隊全員の頭上に金色の光の粒子が降り注ぎ彼らの姿をその場から消したのであった。
基地に戻り、作戦室で仕事終わりの会議をする昇達。
「ふう、山賊とか罪人とはいえ人間相手は精神的に疲れたぜ」
「人間相手ですからね、でも賊と昇さんが同族とは思えません!」
「モモ殿に同感でござる♪ 昇殿、報酬は安くとも賊は仕留めては?」
「まあまあ二人共、昇君のメンタルが大事パオ♪」
「そうですよ? 賊を殺めた事で昇様の心が陰るなど許せません」
昇が敵とは言え、人を殺める事で心を病む事を案じるソーラとナパティ。
「敵は容赦しないけど、精神衛生の為に相手によってレーティングは設けさせてくれると助かる。 けど、皆や大事なもんの為なら仕留める」
愛する者や守るべき人々の為なら、喜んで業を背負うと昇は告げた。
「その時は、私達も背負いますウキ♪」
「拙者の昇殿への愛は、絶対に変わらんでござる♪」
「僕達はずっと昇君と一緒パオ♪」
「私達は、互いが互いの光です♪」
「皆、ありがとうな♪」
手を伸ばし重ね合い、心を重ね合う昇達。
昇は仲間達と日報を書き上げて、その日の業務を終了させた。
翌日、土曜なので学校は休み。
昇達はヤツガミ市から西にある、ツルギ市を訪れていた。
「何と言うか、西洋風だな地面が石畳で建物はレンガ造りが多いな?」
赤いジャケットと白のズボンと言う戦隊の制服姿で駅前を見回す昇。
「駅前のデパートの屋上で明日はショーですよ、昇様♪」
金ジャケットのソーラが褒めてくれと昇に抱き着く。
「まずはデパートの屋上から、地道な営業でござるな♪」
青ジャケットの青玉が笑顔で拳を握る。
「いつか大きなホールで、イベントをしたいです♪」
ピンクのジャケットのモモが、赤レンガ製の大きなデパートを見て呟く。
「ショーでお客さんを楽しませるのも、ヒーローの仕事パオ♪」
緑のジャケットのナパティも微笑む、彼らが来たのは日曜にデパートで行うショーの打ち合わせ。
無名の芸能人の如く、営業活動に励もうと意気込む昇達。
彼らの目の前で突如、デパートの最上階から火の手が上がった。
「マジか! 皆、スクランブルだ!」
「「ソーラチェンジ!」」
変身してデパートへジャンプで乗り込む、ソーラレンジャー。
「大丈夫ですか?」
「ソーラレンジャーです、助けに来ました!」
「ブルー、グリーン、消火開始だ! ピンクとゴールドは救助を!」
役割を分担し作業を開始するソーラレンジャー。
ブルーは水流、グルーリーンは風を操り炎を消して行く。
レッドは動き回り、炎を自分のスーツに吸収させてエネルギーに変えながら消火に回りつつセンサーで要救助者を探す。
「見つけた! って、ふざけるなっ!」
レッドが倒れている母と娘の親子連れと、こん棒を母子へ振り下ろさんとする紫の肌に短パン一丁の鬼人を見つけて駆けだし割り込む。
「ギギッ! 貴様は何者だっ!」
「ソーラレッドだ、レッドニーッ!」
鬼人のこん棒を両腕で受け止め、膝蹴りを相手の腹に打ち込み天井まで飛ばして叩きつけて倒すレッド。
敵を倒したら、倒れている母子にレッドは、回復魔法の光を当てる。
「消火完了でござる♪」
「レッド君、大丈夫パオ? って、そいつはシャサ族っ!」
「取り敢えず倒した、他にもいるかも知れない!」
「お待たせしました!」
「こちらは救助完了です♪」
ピンクとゴールドも合流した。
「ピンクとゴールドは悪いが、この人達を頼む!」
「わかりました、すぐに合流します!」
「お任せ下さい♪」
レッドは母子をピンク達に任せて、ブルーとグリーンを連れて
天井に空いた穴からジャンプで屋上へと向かう。
「……ほう、貴様らは神の戦士だな?」
「何者だ、お前ら!」
「大人しく縛に着く気は、なさそうでござるな?」
「こいつは、やっつけないと駄目な奴パオ!」
レッド達が屋上で相対したのは、紫肌の鬼人達を率いる紫の甲冑の騎士。
「我が名はパープルナイト、デストピアンの幹部だ♪ 今は退いてやろう♪」
パープルナイトは言うだけ言うと、空に黒い穴を開けて手下達と吸い込まれるように消えて行った。
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