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第十一話:レッド、打倒を誓う
「皆ごめん、敵の幹部らしき奴を逃がしちまった!」
「あれは正解パオ、僕達が本気出したらデパートが倒壊するパオ」
「市街では民草の避難などもあります故、下手に争わぬのもありです」
「昇さん、敵兵は倒して負傷者は救助できたから良しですよ♪」
「ええ、敵の名前もわかりましたしこれからです♪」
基地へと戻って来た昇達が作戦室で話し合う。
謎の組織、デストピアンが起こしたデパート襲撃に居合わせた昇達。
ショーどころではなくなったが、消火と人命救助では感謝された。
「後、敵を前にして戸惑っちまったのもごめん!」
仲間達に頭を下げる昇。
山賊とは格の違う悪のオーラに当てられ、体が動けなかった自分が情けなかった。
仲間に鍛えて貰った事を無駄にした気がして、昇は落ち込んでいた。
ヒーロー目指してるくせに、何をビビってるんだと自分を責める昇。
「ヒーローも勇者も、ただ力を振るえば良いわけではありません」
ソーラが昇の気持ちを読んで告げる。
「そりゃそうだけど、ソーラに力を貸してもらったのに申し訳ないぜ」
「でも、昇様の胸の火は消えてませんよね?」
「ああ、こんな事で挫けてられないぜ」
「流石は、昇様♪ その意気です♪」
ソーラは昇の心意気を讃えた。
昇は英雄に憧れ、道を模索し出した優しくも平凡な少年。
だが憧れだけで終わらせず行動する少年だ。
昇の夢をソーラも一緒に掴みたいと思った。
「昇様はこれからです、デパートの件は免疫を付けたとしましょう」
自分達にも昇にも、まだまだ経験が足りていない。
ソーラは、前回は予防接種だと思えと昇に告げた。
「次はやっつけてやるパオ、昇君なら勝てるパオ♪」
「そうです、次に備えて鍛えましょう♪」
「拙者達もおります、心身を鍛えて参りましょうぞ♪」
「ありがとう、皆♪」
支え合う仲間の言葉と笑顔に、昇は安堵の笑みをこぼした。
「……ぶっ! 推しの笑顔の尊さに鼻血が♪」
「こ、これはいけません♪ 素敵すぎます♪」
「の、昇君。 そう言う所が、女神たらしパオ!」
「私、その笑顔でご飯十杯は食べられそうです!」
「いや、お前らさっきまでの空気が台無しかよ!」
空気をぶち壊す仲間達に、昇のツッコミが作戦室内に轟いた。
翌日、昇達は作戦室で敵について勉強していた。
「それでは、デストピアンの敵兵のシャサ族について説明するパオ♪」
ナパティが講師役でホワイトボードに色々書いて行く。
「昇さんに分かりやすく言うと、地球のインドの夜叉に似た種族です」
「モモちゃんの言う通りパオ、人間食べちゃう厄介な奴らパオ」
「いや、ガチ悪でござるな!」
「あの時、被害が出なくて良かったです」
「でも、一応他の種族と共存はしてるんだよな?」
昇は地球の感覚で聞いてみた、人間にも食人族はいる。
「だから厄介なんだパオ、良い奴もいれば悪い奴もいるパオ」
「実はシャサ族、私の地方では牙鬼って言いますがわかります」
ナパティが溜息を吐く、シャサ族は他の種族と混血もできるらしい。
普通に人と一緒に暮らす者達もいて、対立しているらしかった。
「デストピアンに与するのは悪さする奴らって事だな、俺らからすると」
「大体そんな感じパオ、倒しても問題ないパオ」
ナパティが虚空に向けてシャドーボクシングのマネをする。
「でも、シャサ族以外の種族でも構成員がいそうですね?」
「うむ、敵の一部署と言う感じでござった」
「ああ、ありそうだな。 幹部ごとに部下がいるとか?」
「まあ、敵組織の全容はわからないパオ。 だから油断できないパオ」
ナパティが昇達の言葉に考えを述べる。
「牙鬼って、武器に毒とか呪術とか使うんでした!」
モモが敵の種族について重要な事を思い出す。
「マジかよ? 一般人に振るわれたら最悪だ」
自分達はスーツの力などで抵抗できるが、一般人には命とりだ。
「デストピアンが、他の国で活動した様子がないか調べないといけませんね」
ソーラが緊張した顔で呟く。
「一応、カイル殿にも話しておきましょう」
青玉が提案する。
「ええ、油断はできませんが昇様の味方でありますし」
ソーラは一瞬だけ嫌そうな顔をしたが、気を取り直す。
「情報共有は大事パオ、学園の生徒達にも教えておくパオ」
ナパティも、学園に情報を提供する事を提案。
「他の英雄候補の皆さんも、遭遇するかもしれないですしね」
モモもナパティの言葉に乗っかる。
ひとまず作戦室で、敵の手下であるシャサ族について知った昇。
ツルギ市に近い、イワヤマ村のパトロールへ出かけた。
二階建てで横長の赤レンガ造りの建物、イワヤマ村役場。
一階の入り口傍にある受付の、眼鏡をかけたお姉さんが応対してくれた。
「ソーラレンジャーの皆様、本日はいかがなされましたか?」
「防犯のお知らせで伺いました、こちらがポスターです」
昇がポスターを見せる。
地域防衛には、自治体の協力が欠かせない。
まずは役場で相談し、警察軍や防災騎士団にも根回しを頼みたかった。
用件を伝えると、村長経由で警察軍と防災騎士団の担当者にアポが取れた。
テーブルを真ん中に二つのソファが向き合う応接室。
片方のソファは、昇とソーラとスーツ姿の赤鬼のおじさんの村長。
反対側のソファには緑色の軍服を着た犬耳のおじさんと、銀の鎧を着たドワーフのおじさんが座る。
「ツルギ市の件は聞いております、警察軍としても無視できません」
犬耳のおじさんこと、警察軍のドーベル少尉が切り出す。
「防災騎士団の方でも、あんたらの活躍は聞いてるぜ♪」
ドワーフのおじさんは、防災騎士団と言う武力を有する消防署の団長。
「私としては、勇者様はもっと独断専行と思ってましたよ」
赤鬼のおじさんこと村長が笑顔で語り出す。
「皆さんのお力を俺達に貸して下い、お願いします!」
キチンと頭を下げてお願いする昇。
「おいおい頭を上げてくれよ、勇者の坊主の言う事はもっともだ」
「我々も、同じように奴らを警戒していたのです」
ドワーフの団長とドーベルさんが告げる。
「村としても、相談していただけてありがとうござます」
村長も昇に礼を言う。
警戒の呼びかけや通報に情報の共有や避難誘導など、自治体や官憲と協力体制を取る事となったソーラレンジャー。
「緊急事態です、村はずれに紫色の肌の巨人が出ました!」
応接室の扉を開けて、役場の事務のお姉さんが叫ぶ。
「早速ですね、参りましょう♪」
「それじゃあ皆さん、行って来ます!」
「村には被害を極力出さないようにお願いいたします~!」
村長の叫びを背に走り出す、昇とソーラ。
二人が役場を出ると、紫色の肌に口から飛び出した牙を持つ巨人と仲間のメカが戦っていた。
「良し、俺達も行くぜ!」
「ええ、参りましょう♪」
昇達は素早く変身してメカを呼ぶ。
空からレッドのホルスが、ゴールドのスフィンクスを運んで現れた。
二人は自分のメカにジャンプして乗り込むと、仲間達に駆け付ける。
「おお、レッド殿達が来たでござる♪」
「合体してやっつけるパオ♪」
「ドキドキの必殺タイムです♪」
「皆さん、お待たせいたしました♪」
「待たせた皆、ソーラカイザーに合体だ!」
五つのメカが一つになり、巨大ロボットソーラカイザーが誕生する。
巨人は、激しく動き回るメカに手出しが出来ず合体の妨害はできなかった。
「ソーラカイザー、皆、行くぜ!」
「ノーズホイップで行くパオ!」
合体後、グリーンの操作でソーラカイザーの左肩鎧のエレファントの鼻が鞭となって巨人へと向かって振るわれる。
鞭で打たれたよろける巨人。
「行けません、フィールドを張り忘れてます!」
ピンクが大事な事を思い出す。
「では、展開しましょうカイザーフィールド!」
ゴールドが機体を操作し、敵の巨人をソーラカイザーごと異空間へと引きずり込んだ。
デストピアンの戦闘員である巨人が、ソーラカイザーによって取り込まれたのは現実世界と似た異空間であった。
「おっし、ここならいくらでも暴れられるぜ♪」
「遠慮は無用ですよレッドさん♪」
「敵の方もやる気でござる♪」
「さあレッド君、決めるパオ♪」
「ヘリオライトソードを出します!」
ソーラカイザーが必殺の両手剣、ヘリオライトソードを掴んで構える。
敵の巨人も虚空から、刃に毒々しい緑色の液体が滴る大鉈を取り出した。
大鉈から滴る液体が飛び散り、地面や木々を溶かす。
敵の斬撃を受け止めたソーラカイザーにも液体が飛び散り、機体の手足から煙が上がる。
「ぐおっ! マジで毒塗ってやがった!」
「異空間に取り込んで、正解でござるな!」
「現実空間だと洒落にならんパオ!」
「レッドさん、決めて下さい!」
「おっし、任せろ! サンライトスラ~~~~ッシュッ!」
レッドの操作で、ヘリオライトソードに金色の光が灯る。
巨人は大鉈を寝かせて上段受けの構えを取った。
「そんな防御、鎧袖一触です!」
ゴールドが叫んだように、大上段から振るわれた金色の刃は敵を防御諸共一刀両断にして倒したのであった。
「ふう、やっぱりこいつらヤバいな」
敵を倒したレッド、ロボの中で改めてデストピアン打倒を誓うのであった。
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