第十五話:新技開眼

1/1
前へ
/24ページ
次へ

第十五話:新技開眼

 オノゴロ壱根流の竹刀での素振りでガタガタになった昇。  「我々も同行します、男の友情も大事ですが妻の事もお忘れなく!」  「剣なら拙者が手取り足取りするでござる!」  「青ちゃんは抜け駆けするから不安パオ」  「ウキウキじゃないですよ、それは?」  「俺が不安になって来たよ」  昇は戦隊の仲間も連れて、剣術の補習を受ける事となった。  「昇よ、貴様もか?」  「どうも、カイル様の正ヒロインのエミリーです」  「ヒロイン二号のアンナよって誰が、二号よ!」  「姉さん、一人ボケツッコミは空しいですよ」  金髪ツインテールのアンナと、銀髪ショートのエミリー。  カイルは苦い顔で、二人の美少女を両脇に伴っていた。  「カイルも中々の女難だね♪」  コジュウロウは一人だった。  昇達が道場に揃うと、道着姿の夕陽先生がやって来た。  「皆さん揃いましたね、剣術の補習を行います」  全員が正座して神棚に、次にお互いにと礼をする。  礼は大事である。  そして、例の特殊な竹刀を用いた地獄の素振り。  素振りが終わると、先生が昇を見て告げる。  「天照寺君も慣れてきたようですね、では一手技をプレゼントです」  「え、どんな技なんですか?」  昇は先生の技に興味を覚えた。  「行きますよ、まずは剣で雨雲を生み出します」  夕陽先生は、竹刀を上段に上げて先をグルグル回す。  すると、先生の頭上に小さく黒い雨雲が発生した。  「いや、俺そんな能力ないですよ!」  昇が先生に叫ぶ。  「まあまあ、ツッコミは不要です。 見ていて下さい♪」  夕陽先生は微笑むと、雨雲から雷が竹刀に落ち竹刀が帯電する。  「これがオノゴロ壱根流の初伝、雷電の型です♪」  「おっす、やって見ます!」  先生に何か言うと藪蛇な気がした昇。  「昇殿、昇殿は拙者の加護で風雨や雷も使えますぞ!」  青玉が泣き顔で昇に近づき訴えてきた。  「え、加護ってソーラのしか使えないんだけど?」  昇が脳内検索をすると、ゲーム画面のように加護一覧と言うのが浮かぶ。  「ソーラ殿! 狡いでござる! 昇殿のロックを解除するでござる!」  「ソーラ? それはひどいパオよ?」  「ウキウキじゃないですね」  「仕方ありませんね、昇様の為にロックを解除します」  ソーラが掌を昇へと向け、金色の光を浴びせる。  「あ、何か加護の項目が増えたな。 これなら行ける気がする」  「行けるでござる、もう天地を砕くほどの雷が出せるでござる♪」  「いや、そこまでは今はいいって! でも、ありがとうな」  「推しの為でござる♪」  青玉を信じて、自分も同じように上段で竹刀の先を回す。  すると、昇も雨雲を生み出し竹刀に雷属性を纏わせる事が出来た。  「よっし、出来たぜ♪」  「はい、よくできました♪」  喜ぶ昇、拍手する夕陽先生やカイル達。  「これって、昇君は僕達の力も剣技にできるパオ?」  「ウキウキです、ナパティさんなら大地の剣で私なら風の剣です♪」  「私の加護で炎と光です」  「拙者で水、地水火風に光と五属性でござるな♪」  「なるほど、属性を変えられて戦えるのか」  仲間達の言葉を聞いて納得した昇。  「他の方が言うように、属性を変えられるのは魔法剣術の特徴の一つです。 先生とオノゴロ流は雷属性特化ですが、手数が増えれば可能性は広がります」  夕陽先生が講釈を述べる。  「なるほど、ならば複数の属性を剣に纏わせる事も可能だな」  カイルが竹刀に闇と雷の二属性を付与して見せた。  「カイルは流石ね、私は付与できるのはまだ風だけなのに!」  カイルの右隣ではアンナが中段構えの姿勢で、竹刀に風を纏わせる。  「私もまだ冷気だけです」  姉であるアンナのさらに右隣で、エミリーは竹刀に冷気を纏わせていた。  「皆、魔法剣術の呑み込みが早いな♪」  道場の隅で見物していたコジュウロウ。  彼は先生と同じく、竹刀に雷を纏わせながら呟く。  「では皆さん、次は竹刀に属性を纏わせたままの素振りです♪」  夕陽先生が笑顔で昇達に素振りを命じた。  素振りは卒業かと思っていた昇は愕然とした。  「剣と魔力を同時に鍛える鍛錬です、素振りは一生ですよ♪」  「「はいっ!」」  昇達は先生に従い、真面目に素振りを行った。  翌日、昇達は基地の作戦室で新型装備を触っていた。  「剣術を活かすべく、お揃いの剣を作って見ました♪」  ソーラが自慢げに見せるのは玩具っぽいガジェット。  黒いグリップにヒマワリの花弁型の金の鍔、白い刀身の直刀。  「グッズ販売でも考えてる?」  「人気が出たら限定生産したい所存です、このソーラカリバーを♪」  昇の問いの答えるソーラ。  「ソーラ殿の商売っ気はともかく、拙者や昇殿は二刀流ができますな♪」  青玉がソーラカリバーを持ちロマンを語る。  「皆で合体剣技とかできるパオね♪」  「戦いの前に全員で剣を合わせるポーズとか、ウキウキです♪」  「ナパティとモモの言うように、刀剣はロマン装備だよな♪」  「古来より剣は、神具にして王権の象徴ですから我らにピッタリです♪」  仲間達と円卓を囲む中で力説するソーラ。  「じゃあ、取り敢えず使って見ようぜ♪」  昇はソーラカリバーが気に入った。  「で、結局昇君の心の迷いはどうなったパオ?」  「そうでござる! 昇殿のメンタルが心配でござるよ!」  「汗を流してウキウキな感じはしますが、大丈夫ですか?」  「癒しなら私が!」  昇の方へ顔を向ける仲間達。  「今は平気、だけど迷っても剣は振るう!」  迷いや悩みは尽きないけれど、悪と戦う事は止めはしない。  「なので、これからも俺の面倒を宜しく頼む! 女神様達!」  昇は仲間達に向かって合掌して祈り願う。  昇の体から虹色の光が放たれ、ソーラ達に吸い込まれる。  「はうっ! この祈りと願いの気持ち、最高パオ!」  ナパティが頭部を象に変えて鼻を上げる。  「天にも登る心地良さですぞ~♪」  青玉も人化が解けて龍になり天井を舞う。  「ウキウキのエナジーが染みわたります♪」  モモも、ピンク色の猿に姿が変わりはしゃぎ出す。  「はい、その願い聞き届けました♪」  ソーラは、頭部に大輪の向日葵の花を咲かせて喜んだ。  新たな武器、新たな技に目覚めた昇。  ならばテストだと昇達は変身し、全員で岩山へと向かった。  晴れた日曜の朝の岩山に、敵はいないが五色の戦士が集う。  「お馴染みの殺風景な岩山、ここなら怒られないな♪」  「はい、ソーラレンジャーは環境に配慮したヒーローですから♪」  レッドとゴールドが漫才を行う。  「いざ、ソーラカリバーの試験運用ですな♪」  ブルーがソーラカリバーを召喚する。  「パオパオ♪ 合体技パオ♪」  「ウキウキで敵を倒せそうです♪」  テンションが上がるグリーンとピンク。  まずは全員で横一列に並び、武器に属性をエンチャント。  「行くぜ、レッドの火!」  「ブルーの水でござる!」  「グリーンは大地パオ!」  「ピンクは風です♪」  「ゴールドの光よ♪」  刀身をスーツの色の光で包む戦士達。  呼吸を合わせて、同時に武器を振り上げて下ろせば五色の光の斬撃が飛ぶ。  斬撃は空中で重なり、五色の光の玉となり岩にぶつかり岩を砕く。  「よし、まずは合体技は成功だ♪ 皆、合わせてくれてありがとうな♪」  仲間達に礼を言うレッド。  「合わせ技は、突き出して線状に放出するなどもできそうでござるな」  ブルーがパターンの派生案を出す。  「バズーカの時みたいに、センターを変えて属性の変化も付けるパオ♪」  グリーンもアイデアを出す。  「んじゃあ、技の名前はひとまずカリバーバーストでどうかな?」  「レッドが言うなら、私達に依存はありません」  「そうでござる、実戦で決めて見せたいでござる♪」  「本番で決める為に練習するパオ♪」  「頑張りましょう♪」  新技、カリバーバーストの訓練に励むソーラレンジャーであった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加