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第十六話:新たな敵
一歩一歩力を身に着けて行くソーラレンジャー。
ホームタウンのヤツガミ市で今日もローカルヒーロー業に勤しむ。
学校が終われば、シノギのカレー屋やヒーロー活動の時間。
昇はヒマワリ村にあるカレー屋で稼業に精を出す。
戦い以外でも金を稼がないと、ヒーロー活動はできない。
「はい、大盛りカレーお待ちどうさまです♪」
「おう、ありがとよ♪」
昇は代金を受け取り、弁当をビニールに包んで客に手渡す。
パープルナイトを倒してから、デストピアの動きはなりを潜めていた。
だが、デストピア以外にもソーラレンジャーは相手にする敵が多い。
最近では、地域の要請で魔物退治に狩り出される事が増えて来ていた。
「でっか! 何だよあの兎!」
夜の農村。
電撃魔法が発動する柵で囲われた畑を背にレッドが叫ぶ。
「ジャイアントラビットです、野生ですね」
レッドの隣でゴールドが解説する。
「群れで来たでござるよ!」
「兎肉に変えてやるパオ!」
「兎のお肉でウキウキです♪」
食欲を全開にして武器を構えるソーラレンジャー。
対するは、原付バイクほどのサイズの白い兎の群れ。
「よし、ソーラカリバー構え! 斬撃を飛ばすぜ!」
メンバー全員が新武器、ソーラカリバーを召喚して上段に構える。
戦隊全員が振り下ろした刀から、エネルギーの斬撃が飛ぶ。
斬撃は迫り来るジャイアントラビットの群れを切り裂き、仕留めた。
「や、やり過ぎたパオ!」
「ナパティ殿、食うつもりでござったか?」
グリーンの言葉にブルーが驚く。
「取り敢えず、ターゲットロックしてソーラファイヤー!」
レッドが巨大兎の骸抜向けて掌を突き出せば、骸が瞬時に燃え上がる。
「輪廻に返しましょう」
ゴールドが祈れば、光の粒子が天に上る。
「お弔いも完了ですし、帰りましょう♪」
ピンクの言葉に皆が頷きその日の夜は帰った。
「しかし、昨夜の兔は何故人里に?」
基地の作戦室で牛乳を飲みながら考える昇。
「調査に出かけた方が良いかもしれませんね」
ソーラが昇に相槌を打つ。
「おはようでござる、土曜なので学校は休みでござるな♪」
「おはようパオ~♪」
「おはようございます♪」
青玉、ナパティ、モモと仲間達が揃う。
「休みの所ごめん、昨日の兔事件の調査で山に行きたいんだ」
昇が仲間達を見回して告げる。
「お任せ下され、どんな敵でも切り捨てましょうぞ♪」
「お弁当を用意して行くパオ♪」
「おやつのバナナも用意しますね♪」
「向日葵茶をご用意いたします♪」
「いや、ピクニックとかじゃないからな?」
仲間のピクニック気分に昇はツッコんだ。
「そこは大丈夫パオ♪」
「リラックスは大事ですぞ、ストレス軽減の為にも♪」
「昇さんとお出かけでウキウキです♪」
「こちらが気を緩めたふりをする事で、敵の気を緩めるのです♪」
仲間達が昇にサムズアップする。
「そっか、俺達が囮を兼ねるんだ♪ ごめん、俺だけがって思ってた!」
ソーラ達仲間に頭を下げる昇。
「いえいえ、真剣な事も大事ですから♪」
ソーラが満面の笑みで微笑む。
「拙者達の事を思っての事でござるゆえに、むしろ幸せでござる♪」
青玉はブレなかった。
「昇君は真面目で優しい子パオ♪」
「大好きですよ、昇さん♪」
ナパティとモモも昇を許す。
「じゃあ、半分リフレッシュで調査に行こう♪」
昇も仲間達に気分を合わせて行く事にした。
「昇君も乗り気になったし、現地で焼き肉パオ♪」
「ウキウキです~っ♪」
「焼肉でござるか、カットはお任せでござる♪」
「最高の焼き具合で昇様に召し上がていただきます♪」
「そうなると、米とか調味料もいるなあ♪」
焼肉と聞いて昇の気持ちが遊び八割に傾く。
かくして、ソーラレンジャーは打ち上げも兼ねて出かけたのであった。
「焼肉、まさか肉は現地で狩るとはな」
「取り立てを焼くのは最高パオ♪」
「このマウンテンバッファローの所為でしょうか?」
「まずは、解体でござるな♪」
「この先にキャンプに適した場所がありますよ♪」
昇達は五人で軽自動車サイズの牛の魔物を担ぎ森を歩く。
森を抜けるとロボを呼んでも平気そうな広さの場所に出た。
地面は砂利、茶色い山肌の崖とヒーローの戦闘でなじみ深い景色。
「さあ、ロボを呼んで調理するパオ♪」
ナパティが笑顔で叫ぶ。
「よし、全機集合だ♪」
「「オ~~~ッ♪」」
昇達が変身ブレスレットを使い、自分達の機体を呼び出そうとした時。
崖の上に爆炎が上がる!
「ヒャッハ~~~ッ! 見つけたぜボンクラ共!」
血のように赤い甲冑で全身を固めた騎士が叫ぶ。
「そっちこそ引っかかったな、デストピア!」
昇が崖の上の赤き甲冑の騎士を見て叫ぶ。
「やはり出ましたか、こちらは宴のつもりでしたのに!」
「ソーラ殿、撃退して祝勝会ですぞ!」
「九割の遊び気分が台無しパオ!」
「あれをやっつけて、ウキウキを取り戻し案すよ皆さん!」
「良し、皆でソーラチェンジだ!」
昇達がソーラレンジャーへと変身する。
「やる気じゃねえか、行くぜ!」
赤の騎士は虚空から大ぶりの鉈を取り出し、単騎で襲って来た!
「行くぜ皆、フォーメーションAだ!」
レッドが敵の矢面に立ち、仲間四人がAの字の如く背後に立つ。
レッドが、真紅の大太刀ソーラブレードで迫り来る赤の騎士と切り結ぶ。
「はっ♪ 仲間に支えられて、良いご身分だな♪」
「そりゃこっちは、女神達に愛された湯者だからだよ!」
敵の煽りに負けず言い返すレッド。
パープルナイトとの戦いで、少しだけ免疫が付いた。
仲間の力も借りて鍔迫り合いに打ち勝ち、敵を蹴りで突き飛ばす。
「ぐはっ! 流石は、パープルナイトを倒しただけはあるな♪」
「そう言う貴様はレッドナイトか?」
レッドが敵に名を尋ねる。
「お揃いは良いけど違うねえ、我が名はブラディナイト♪」
頭部全体を覆う兜の中から男女の区別がつかない声が響く。
「デストピア、そちらの狙いは何ですか!」
ゴールドが向日葵の花弁が付いた杖を装備し構える。
レッドの行動の間に、仲間達全員が個人武装を装備していた。
「決まってるだろ、お前らの赤い勇者の心身だよ♪」
兜の下で嫌らしく笑う赤き騎士、ブラッディナイト。
「何て事を! 絶対に許しません!」
「そなた、拙者達の逆鱗に触れたでござるな!」
「暴れるパオ!」
「ウキウキじゃないです!」
世界征服の類ではなかった事に驚く、ソーラレンジャー。
敵に思い切り自分達の地雷を踏まれて、奮起する。
「ヒャッハ~♪ 隙あり~~っ♪」
「危ねえ、側転回避っ!」
赤き騎士が鉈を振り、斬撃を飛ばすのを皆で回避するレッド達。
「上等だ、俺の首も身柄もお前らには渡さねえ!」
敵の狙いが自分とは思わなかったレッド。
悪の組織に人生を好き勝手にされてはたまらない。
お返しにと斬撃を飛ばすが、赤き騎士は鉈を振り弾く。
「そちらはこちらの地雷を踏むのがお好きなようですね?」
「拙者達のダーリンを誰が渡すものか!」
「レッド君は、僕達のパオ!」
「絶対にあげません!」
敵の言葉に怒りのオーラを放出するゴールド達。
「はっ♪ 良いね、そのやる気♪ なら今度は巨大戦だ♪」
赤き騎士が指を鳴らせば虚空から、一体の騎士型ロボが現れる。
「行くぜブラッディ、遊びの時間だ♪」
赤き騎士はジャンプしてロボに吸い込まれる。
「上等だ、こっちもソーラカイザーで行くぜ!」
レッド達も機体を召喚して乗り込む、敵は手出しをして来なかった。
「出たな、あれが神の巨人か♪ 行くぜブラッディ!」
マスタースレイブ方式で機体を操る赤き騎士がソーラカイザーに迫る。
「上等だ、カイザーダッシュ!」
レッドが操作し、全身を炎に包んだソーラカイザーが突撃。
敵の機体であるブラッディを突き飛ばす。
「ぐはっ! 良いねえ、そっちの機体♪」
コックピット内で赤き騎士が呟く。
「畜生、牽制とはいえあっちもやるな!」
「遊び呼ばわりですからね、手強いです」
レッドの言葉にゴールドが返す。
「なんの! 我等なら負けはしませぬ!」
「五人が力を合わせ、役割を全うすれば勝てるパオ♪」
「そうです、勝ってウキウキの祝勝会ですよ♪」
ブルー、グリーン、ピンクが続く。
「そうだな、笑う門には福来る! 行くぜ皆♪」
仲間達と息を合わせ、再度の格闘戦に向かうソーラカイザー。
「おうおう、ノリノリだなあ♪ こっちも燃えるぜ!」
ソーラカイザーは金色に輝く拳、ブラッディは赤き拳を繰り出す。
ぶつかり合う拳は爆発を生み、双方再び距離を空ける。
新たな敵幹部、ブラッディナイトとの巨大戦が本格的に始まる。
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