第十六話:新たな敵

1/1
前へ
/24ページ
次へ

第十六話:新たな敵

 一歩一歩力を身に着けて行くソーラレンジャー。  ホームタウンのヤツガミ市で今日もローカルヒーロー業に勤しむ。  学校が終われば、シノギのカレー屋やヒーロー活動の時間。  昇はヒマワリ村にあるカレー屋で稼業に精を出す。  戦い以外でも金を稼がないと、ヒーロー活動はできない。  「はい、大盛りカレーお待ちどうさまです♪」  「おう、ありがとよ♪」  昇は代金を受け取り、弁当をビニールに包んで客に手渡す。  パープルナイトを倒してから、デストピアの動きはなりを潜めていた。  だが、デストピア以外にもソーラレンジャーは相手にする敵が多い。  最近では、地域の要請で魔物退治に狩り出される事が増えて来ていた。  「でっか! 何だよあの兎!」  夜の農村。  電撃魔法が発動する柵で囲われた畑を背にレッドが叫ぶ。  「ジャイアントラビットです、野生ですね」  レッドの隣でゴールドが解説する。  「群れで来たでござるよ!」  「兎肉に変えてやるパオ!」  「兎のお肉でウキウキです♪」  食欲を全開にして武器を構えるソーラレンジャー。  対するは、原付バイクほどのサイズの白い兎の群れ。  「よし、ソーラカリバー構え! 斬撃を飛ばすぜ!」  メンバー全員が新武器、ソーラカリバーを召喚して上段に構える。  戦隊全員が振り下ろした刀から、エネルギーの斬撃が飛ぶ。  斬撃は迫り来るジャイアントラビットの群れを切り裂き、仕留めた。  「や、やり過ぎたパオ!」  「ナパティ殿、食うつもりでござったか?」  グリーンの言葉にブルーが驚く。  「取り敢えず、ターゲットロックしてソーラファイヤー!」  レッドが巨大兎の骸抜向けて掌を突き出せば、骸が瞬時に燃え上がる。  「輪廻に返しましょう」  ゴールドが祈れば、光の粒子が天に上る。  「お弔いも完了ですし、帰りましょう♪」  ピンクの言葉に皆が頷きその日の夜は帰った。  「しかし、昨夜の兔は何故人里に?」  基地の作戦室で牛乳を飲みながら考える昇。  「調査に出かけた方が良いかもしれませんね」  ソーラが昇に相槌を打つ。  「おはようでござる、土曜なので学校は休みでござるな♪」  「おはようパオ~♪」  「おはようございます♪」  青玉、ナパティ、モモと仲間達が揃う。  「休みの所ごめん、昨日の兔事件の調査で山に行きたいんだ」  昇が仲間達を見回して告げる。  「お任せ下され、どんな敵でも切り捨てましょうぞ♪」  「お弁当を用意して行くパオ♪」  「おやつのバナナも用意しますね♪」  「向日葵茶をご用意いたします♪」  「いや、ピクニックとかじゃないからな?」  仲間のピクニック気分に昇はツッコんだ。  「そこは大丈夫パオ♪」  「リラックスは大事ですぞ、ストレス軽減の為にも♪」  「昇さんとお出かけでウキウキです♪」  「こちらが気を緩めたふりをする事で、敵の気を緩めるのです♪」  仲間達が昇にサムズアップする。  「そっか、俺達が囮を兼ねるんだ♪ ごめん、俺だけがって思ってた!」  ソーラ達仲間に頭を下げる昇。  「いえいえ、真剣な事も大事ですから♪」  ソーラが満面の笑みで微笑む。  「拙者達の事を思っての事でござるゆえに、むしろ幸せでござる♪」  青玉はブレなかった。  「昇君は真面目で優しい子パオ♪」  「大好きですよ、昇さん♪」  ナパティとモモも昇を許す。  「じゃあ、半分リフレッシュで調査に行こう♪」  昇も仲間達に気分を合わせて行く事にした。  「昇君も乗り気になったし、現地で焼き肉パオ♪」  「ウキウキです~っ♪」  「焼肉でござるか、カットはお任せでござる♪」  「最高の焼き具合で昇様に召し上がていただきます♪」  「そうなると、米とか調味料もいるなあ♪」  焼肉と聞いて昇の気持ちが遊び八割に傾く。  かくして、ソーラレンジャーは打ち上げも兼ねて出かけたのであった。  「焼肉、まさか肉は現地で狩るとはな」  「取り立てを焼くのは最高パオ♪」  「このマウンテンバッファローの所為でしょうか?」  「まずは、解体でござるな♪」  「この先にキャンプに適した場所がありますよ♪」  昇達は五人で軽自動車サイズの牛の魔物を担ぎ森を歩く。  森を抜けるとロボを呼んでも平気そうな広さの場所に出た。  地面は砂利、茶色い山肌の崖とヒーローの戦闘でなじみ深い景色。  「さあ、ロボを呼んで調理するパオ♪」  ナパティが笑顔で叫ぶ。  「よし、全機集合だ♪」  「「オ~~~ッ♪」」  昇達が変身ブレスレットを使い、自分達の機体を呼び出そうとした時。  崖の上に爆炎が上がる!  「ヒャッハ~~~ッ! 見つけたぜボンクラ共!」  血のように赤い甲冑で全身を固めた騎士が叫ぶ。  「そっちこそ引っかかったな、デストピア!」  昇が崖の上の赤き甲冑の騎士を見て叫ぶ。  「やはり出ましたか、こちらは宴のつもりでしたのに!」  「ソーラ殿、撃退して祝勝会ですぞ!」  「九割の遊び気分が台無しパオ!」  「あれをやっつけて、ウキウキを取り戻し案すよ皆さん!」  「良し、皆でソーラチェンジだ!」  昇達がソーラレンジャーへと変身する。  「やる気じゃねえか、行くぜ!」  赤の騎士は虚空から大ぶりの鉈を取り出し、単騎で襲って来た!  「行くぜ皆、フォーメーションAだ!」  レッドが敵の矢面に立ち、仲間四人がAの字の如く背後に立つ。  レッドが、真紅の大太刀ソーラブレードで迫り来る赤の騎士と切り結ぶ。  「はっ♪ 仲間に支えられて、良いご身分だな♪」  「そりゃこっちは、女神達に愛された湯者だからだよ!」  敵の煽りに負けず言い返すレッド。  パープルナイトとの戦いで、少しだけ免疫が付いた。  仲間の力も借りて鍔迫り合いに打ち勝ち、敵を蹴りで突き飛ばす。  「ぐはっ! 流石は、パープルナイトを倒しただけはあるな♪」  「そう言う貴様はレッドナイトか?」  レッドが敵に名を尋ねる。  「お揃いは良いけど違うねえ、我が名はブラディナイト♪」  頭部全体を覆う兜の中から男女の区別がつかない声が響く。  「デストピア、そちらの狙いは何ですか!」  ゴールドが向日葵の花弁が付いた杖を装備し構える。  レッドの行動の間に、仲間達全員が個人武装を装備していた。  「決まってるだろ、お前らの赤い勇者の心身だよ♪」  兜の下で嫌らしく笑う赤き騎士、ブラッディナイト。  「何て事を! 絶対に許しません!」  「そなた、拙者達の逆鱗に触れたでござるな!」  「暴れるパオ!」  「ウキウキじゃないです!」  世界征服の類ではなかった事に驚く、ソーラレンジャー。  敵に思い切り自分達の地雷を踏まれて、奮起する。  「ヒャッハ~♪ 隙あり~~っ♪」  「危ねえ、側転回避っ!」  赤き騎士が鉈を振り、斬撃を飛ばすのを皆で回避するレッド達。  「上等だ、俺の首も身柄もお前らには渡さねえ!」  敵の狙いが自分とは思わなかったレッド。  悪の組織に人生を好き勝手にされてはたまらない。  お返しにと斬撃を飛ばすが、赤き騎士は鉈を振り弾く。  「そちらはこちらの地雷を踏むのがお好きなようですね?」  「拙者達のダーリンを誰が渡すものか!」  「レッド君は、僕達のパオ!」  「絶対にあげません!」  敵の言葉に怒りのオーラを放出するゴールド達。  「はっ♪ 良いね、そのやる気♪ なら今度は巨大戦だ♪」  赤き騎士が指を鳴らせば虚空から、一体の騎士型ロボが現れる。  「行くぜブラッディ、遊びの時間だ♪」  赤き騎士はジャンプしてロボに吸い込まれる。  「上等だ、こっちもソーラカイザーで行くぜ!」  レッド達も機体を召喚して乗り込む、敵は手出しをして来なかった。  「出たな、あれが神の巨人か♪ 行くぜブラッディ!」  マスタースレイブ方式で機体を操る赤き騎士がソーラカイザーに迫る。  「上等だ、カイザーダッシュ!」  レッドが操作し、全身を炎に包んだソーラカイザーが突撃。  敵の機体であるブラッディを突き飛ばす。  「ぐはっ! 良いねえ、そっちの機体♪」  コックピット内で赤き騎士が呟く。  「畜生、牽制とはいえあっちもやるな!」  「遊び呼ばわりですからね、手強いです」  レッドの言葉にゴールドが返す。  「なんの! 我等なら負けはしませぬ!」  「五人が力を合わせ、役割を全うすれば勝てるパオ♪」  「そうです、勝ってウキウキの祝勝会ですよ♪」    ブルー、グリーン、ピンクが続く。  「そうだな、笑う門には福来る! 行くぜ皆♪」  仲間達と息を合わせ、再度の格闘戦に向かうソーラカイザー。  「おうおう、ノリノリだなあ♪ こっちも燃えるぜ!」  ソーラカイザーは金色に輝く拳、ブラッディは赤き拳を繰り出す。  ぶつかり合う拳は爆発を生み、双方再び距離を空ける。  新たな敵幹部、ブラッディナイトとの巨大戦が本格的に始まる。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加