第二十話:黄色の騎士

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第二十話:黄色の騎士

 ソーラレンジャーとマオウジャーのロボ対決。  格闘に武器にとぶつかり合い、最後は手を取り合う。  友情のロボバトルの動画の再生数はそこそこにヒットした。  「ふう、みんなお疲れ様♪」  昇が会議室でラッシーのグラスを手に仲間達を労う。  「再生数が稼げてウキウキですよ♪」  モモが笑顔でノートPCを開いて見せる。  「規約違反なコメントは通報パオね」  ナパティは動画のコメント欄を的確にチェック。  「しかし、ロボは良いですなあ♪」  青玉は無邪気に笑った。  「マオウジャー側もコラボ動画を上げてますね」  ソーラが呟く。  「そこはお互いのコラボ企画だからな」  昇がラッシーを一口飲んでから呟く。  マオウジャーとも共闘関係が築けたのは良かった。  「家のシステムをパクった代金位には働いていただきましょう」  ソーラはまだカイルに変身システムを解析され、更にはロボまで丸パクリされた件を根に持っていた。  「良し、明日も頑張ろう♪」  昇の言葉に皆が頷いた。  人生を楽しむ音も忘れず、戦いに挑むソーラレンジャー。  デストピアンを警戒しつつ、カレー屋に学業にローカルヒーロー業にと日常を過ごす。 「しかし、今後は活動地域を広げないとまずいよな」  学校を終えてカレー弁当を売りつつ昇は呟く。  この世界のヒーローである勇者は、縄張り意識がアメリカ並みに強い。  勇者の活動地域は神様の縄張りなので、迂闊な事をすれば縄張り荒らしだ。  地域を越えた互助組織として組み合いはあるが、出る杭は打たれるとかが神様の世界でもあるのが昇には少し面倒臭かった。  「昇君の感じる窮屈さはわかるパオ」  基地の会議室で円卓に座る昇にナパティが同意する。  ナパティは神様の中でも良い所のお嬢様だ。  「ウキウキじゃないですよね、上の方が優先されますし」  モモが昇達に同意する。  彼女もナパティ同様に実家が太い神の娘だ。  実家が太くても、上の兄弟の方が厚遇されがちなのが不満であった。  「神々も名家は大変でござるなあ」  青玉がラッシーを飲みつつ呟く。  「俺からすると、青玉も由緒あると思うぞ?」  「ド田舎の守り神でござるがな♪」  昇に褒められてドヤ顔する青玉。  「今は小さいですが、皆で成り上がって行きましょう♪」  ソーラが拳を握る。  「ああ、俺達の細腕繁盛記はこれからだからな♪」  昇もソーラに同意する。  「目指せ未来の大英雄パオ!」  ナパティが拳を突き上げて叫ぶ。  「グッズを売って大儲けです!」  モモも欲望を叫ぶ。  「各種メーカーからお声がかかるよう励みましょうぞ♪」  青玉も叫ぶ。  「お前ら、欲望に忠実過ぎだよ!」  昇はツッコミの叫びを上げた。  一方その頃、デストピアン側でも新たに動きがあった。  赤黒い壁に灰色の床、奈落の城の玉座の間。  肘掛けが髑髏の金の玉座に座るクイーントピア。  「ソーラレッド、魂も腕前も育ってきておるのう♪」  目の前に水晶玉を浮かべ、ソーラレンジャーの戦いを見て微笑む。  その笑顔は恋する少女の物。  彼女も昇の持つ神や魔物に愛される特性に惹かれていた。  「ソーラレッド、そなたも世界も必ず我が物にしてくれよう♪」  クイーントピアの邪悪な慕情が燃え上がる。  恋に身を焦がす主の前で跪いて指示を待つのは黄色い甲冑の騎士。  「おお、すまぬのトパーズナイトよ♪ 次はそなたに頼みたい」  クイーントピアが黄色の騎士、トパーズナイトに語りかける。  「謹んで拝命いたします、我が主」  主人の言葉に頷くトパーズナイト。  「うむ、蚊の者を我が夫に相応しい英雄に育てよ♪」  クイーントピアの狙いは昇の闇堕ち。  立派な英雄程、悪に落ちた時は恐ろしい。  彼女は闇の王となった昇と夫婦となり、世界を支配する事を望んでいた。  「仰せのままに」  トパーズナイトは床に沈んで行きながら退室した。  「ソーラレッド、暗黒の太陽となって永遠に我を照らしたまえ♪」  クイーントピアは愛しそうに呟いた。  黒い壁とバーカウンターに白骨で出来た椅子。  奈落の城にある幹部用の悪趣味な酒場。  バーテンダーは赤髪の野性的な目付きの女。  ブラッディナイトの素顔の姿であった。  「よう、トパーズ♪ ここじゃ鎧は脱げよ♪」  鋭い歯を見せて笑いトパーズナイトを出迎える。  「断る、貴公は蘇ってもその調子か?」  トパーズナイトは呆れつつ椅子に座る。  「ああ、私は変わらねえよ♪ ほら、飲んで行きな♪」  ブラッディナイトが赤黒い液体が入った紫のグラスをトパーズに差し出す。  「では、景気づけとパープルの弔いでいただこう」  トパーズナイトは兜の口の部分だけを開いてグラスの中身を飲み干す。  「次はお前が行くのか、あの坊ちゃんは手強いぜ?」  ブラディナイトが尋ねる。  「さらに手強い存在に鍛えよと主委の命が下った」  トパーズナイトが答える。  「うへえ、あの方もこだわりが強いこって♪」  「我らの王となりえる少年、戦うのが楽しみだ」  「良いねえ、私も機体が直ったらリベンジするよ♪」  ブラッディナイトとトパーズナイト。  二人の悪の騎士が語り合う。  新たなる刺客の魔の手が昇や仲間達へと迫ろうとしていた。  トパーズナイトが動き出した事を知らぬ昇達。  海辺の街であるミナト市を訪れていた。  「ここがミナト市か? 都会っぽいなあ」  青空の下、潮の香りが漂う海岸でゴミ拾いをしながら呟く。  ソーラレッドに変身しているから厚さは苦ではない。  トングで掴んだゴミを背中に背負った籠へ入れる。  「皆で海って、ウキウキなシチュエーションのはずでは?」  ピンに変身したモモが不満を漏らす。  「終わったら、一緒に海の家でかき氷でも食べよう♪」  レッドがピンクを宥める。  「ウキウキですね、頑張りまっす♪」  レッドの言葉にピンクが気合を入れる。  「拙者はあ~んして欲しいでござる♪」  「僕もお願いパオ♪」  「私も所望いたします♪」  ブルーにグリーンにゴールドもレッドにご褒美をねだる。  「ああ、約束する♪ 皆も俺に食べさせてくれ♪」  レッドが仲間達に告げれば仲間達が頷く。  ソーラレンジャーに来た依頼は、海岸の美化活動であった。  報酬は海の家の割引券と安かったが、活動範囲を広げたかった昇達には渡りに船と引き受けたのであった。  「小さな事からコツコツと下積みをして行こう」  「地方営業は新規ファンの獲得の為にも重要ですからね」  引き受けた経緯を思い出しながらレッドとゴールドが語り合う。  話をしつつも死後を得お終えたソーラレンj-。  集めたゴミを集積所へと運び終えた頃、海の様子が変化した。  「おや、何だか海の様子がおかしくないか?」  レッドが何かを感じて海へと走り出す。  「僕達も追いかけるパオ!」  「レッド殿、お待ち下され!」  「かき氷はお預けですか?」  「折角、仕事を頑張ったと言うのに!」  仲間達がレッドを追い、合流すると同時に海から鮫の怪人が飛び出した。  「ヒャッハ~♪ 海岸を蹂躙してやるぜ~~っ♪」  下卑た叫びを上げる鮫怪人。  「そうはさせるか! 俺達が相手だ!」  レッドが鮫怪人の前に立ちはだかる。  「ほう、お前は噂のソーラレッドか? 上等だ!」  レッドを見て鮫怪人が牙を剥き、指を鳴らすと敵が増えた。  突然現れた鮫怪人達に海水浴客は慌てて逃げ出す。  「ああもう、ゴミ拾いしたのにまた汚れたパオ!」  グリーンが逃げる一般人達を守りながら敵兵を倒す。  「私達の邪魔をした報いを受けて下さい!」  ピンクも激怒してロッドを振るい戦闘員クラスの鮫人間をしばき倒す。  「鮫が龍に喧嘩を売るとは愚かものが!」  ブルーが怒りの殺気を放てば、戦闘員達は海へと逃げ出して行く。  「この程度の敵に蒔けはしません!」  ゴールドも杖からビームを放ち鮫人間達を射抜いて行く。  「さあ勝負だ鮫怪人!」  「くそったれが!」  レッドが炎が灯る真紅の刃を振るい、鉈を振るう鮫怪人と切り結ぶ。  「さて、まずは小手調べと行こうか?」  レッド達ソーラレンジャーと鮫怪人の戦闘を、姿を隠した状態でトパーズナイトは見つめていた。
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