第三話:異世界スクールデイズ

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第三話:異世界スクールデイズ

 「ちっ! 転校初日に野良スライムか、リアルにRPGな世界だな!」  「田舎ですから、低級の魔物が虫の如く出てきます♪」  「一応、ステータスを見てみよう」  「流石は昇様、ゲーム経験が活かされてますね♪」  昇の目に拡張現実のように、枠で囲われた文章や矢印などが表示される。  「何か、自分がゲームキャラになった気分だ青スライムか」  「ヒアルロン酸代わりになる敵です、捕獲しても倒しても美味しいです♪」  「スライム注射か、予防接種にもモンスター使ってそうだなあ」  「使えるものは何でも使うのは地球と一緒です♪」  ソーラと掛け合い漫才をしつつ、襲い掛かって来た青スライムを素の格闘で撃破する昇とソーラ。  敵を倒すとブレスレットが顕現しモンスターの骸に光を当てると青スライムが小さい銀貨に変わりブレスレットに吸い込まれた。  「自動で換金と集金してくれるのはありがたいな」  「缶ジュース二本分くらい稼ぎましたね、それでは学校へ行きましょう♪」  「ああ、転校初日から遅刻は不味いなソーラチェンジ!」  「ええ、ソーラチェンジ♪」  昇達はヒーロースーツを身に纏い、超人的な速度で走り田舎道を越えて丘の上にある学校へと辿り着いた。  「赤い屋根と、お城もどきの石造りが西洋っぽいな」  「着きました、ここがヤツガミ魔法英雄学園です♪」  九十年代のアニメに出て来そうな日本の学校風の校門。  だが、校舎は西洋の城に似た造りだった。 東西の二本の塔が校舎を繋ぎ、どこか鬼の頭のように見える。  変身を解いた二人が、開いている門をくぐり校内へと入る。  「は~っはっは~っ♪ 良く来たな、新たな時代の主人公よっ♪ とうっ!」  塔の上に人影が現れたかと思うと、人影がジャンプしてスーパーヒーロー着地で昇達の前に現れた。  肩までの短い黒マント、いやケープを白いフリル付きシャツの上に羽織った短く黒い内ハネボブカットの釣り目で野性的なイケメンは間違いなく主人公の風格を持っていた。  シャツの下は軍服っぽい緑のズボンに黒ブーツ、腰には日本刀。  「……ふっ♪ 俺の事を主人公っぽいと思ったな少年よ、その通りだ♪」  「もしかして、校長先生ですか?」  「ほう、そこの女神に俺の事でも聞いたか? 良いヒロインを得たな♪」  「軽くは、日本から転移して来た主人公な人とか?」  「そう、俺がこの学園の長にして主人公の先輩の八津神志郎(やつがみ・しろう)だ後輩にして教え子よ♪」  「おっす、天照寺昇です」  「昇様のヒロインのソーラです♪」  「ああ、歓迎しよう。 ようこそ、主人公達の集う学園へ♪」  大仰に志郎が腕を開いて笑う。  志郎に先導され、校舎に入り廊下を進む昇達。  洋風な入口から和風の木造校舎風に切り替わり、校長が引き戸を開ける。  「さあ、諸君♪ 転校生を連れて来たぞエミリー先生、後は任せた♪」  「ちょ、校長先生大好き♪ って、駄目駄目! 今は先生モード」  黒いスーツに、眼鏡をかけた金髪エルフの美人女性教師事エミリー先生。  昇の瞳に、校長の第七夫人と校長へのマックスの好感度が表示がされた。  「表示されたステータスから色々お察しですね、ごちそうさまです♪」  「校長からして、ヤベえ所に来ちまったな?」  「ごめんなさい、担任のエミリー・ヤツガミです。 では、転校生君は自己紹介を」  気を取り直したエミリー先生に促された昇が、生徒達を見る。  どいつもこいつも、何か漫画やラノベの主人公っぽいのとヒロインだ。  生徒達からステータスを見られている事に気付く昇とソーラ。  「えっと、日本から来た天照寺昇です変身ヒーローのレッドです」  「昇様のヒロインで女神のソーラです♪」  生徒達全員から物珍しい顔をされた、心外だった。  ちらりと昇にも生徒達のステータスが見えたが、転生者や転移者やその二世とかだった。  「はい、と言うわけで質問などは休み時間にね」  先生がしめくくり、昇とソーラは教室入り口側の一番前の席に着いた。  ソーラの改造で知識付与された事に加え、テラランド自体が地球にファンタジー要素を足した感じの世界なので問題なく授業にはついて行けた。  休み時間になると、天才魔法使いやら転生した剣士とか日本出身の少年達が昇達の所に集い質問攻めになる。  その内容は、昇達の能力などではなく今の日本のアニメや特撮などのテレビ番組や漫画やらについてであった。  「うん、皆が日本に飢えてるのはわかったよ」  「普通に日本から通学されてる昇様は、レアなようですからね」  質問に答え終えてから呟く昇。  「転校生、何と言うかご苦労だったな?」  褐色に黒髪で耳にピアスをした、赤い瞳の美少年が来て語りかけて来た。  「どうも、まあ長い間離れてると同郷人が珍しいんだよ」  「郷愁か、俺はカイル・デミウルゴス。 転生魔王だ♪」  「宜しくカイル、何か良い奴だな?」  「……ふ♪ 勇者、勇者を知ると言う奴か♪ まあ宜しく頼む♪」  カイルと握手を交わす昇、同時にカイルの情報が伝わり記録された。  握手を解いたカイルの左手首には紫色のブレスレットが着いていた。  「解析させてもらった、暇な時は追加戦士で手伝おう♪」  「ちょっ! ナチュラルにパクられてますよ、昇様っ!」  ソーラがカイルにより、技術をコピーされた事に慌てる。  「うん、まあカイルなら悪い事しないって信じられるかな?」  「ほう、面白いな貴様♪ ならば俺は、勇者の友に恥じぬと誓おう♪」  昇は何故かカイルに友情を感じ、カイルもまた昇に友情を感じた。  カイルの行動を見た他の主人公属性持ちの転移者や転生者達が、我も我もと迫るがそれぞれがヒロイン達に止められた。  「何だか、いきなり番外戦士ができたな?」  「まあ、主人公属性の集まる学園ならではの事と受け入れましょう」  これが昇のヤツガミ学園での初日に始まりであった。  二時間目はオノゴロ史と言う、学園所在地の国の歴史だ。  日本に似た和風ファンタジー世界な歴史で、忍者や武士や陰陽師や僧兵など が今でも実在している事と校長がこの国のお姫様を娶った王配だと知った。  三時間目の世界史でも、校長がいくつかの国の王配として記録されていた。  四時間目の体育、男女ともにジャージに着替えて校庭で剣術の授業。  剣道着を身に纏った、姫カットで太繭の美人な女性の先生。  「オノゴロ壱根流(いっこんりゅう)師範、八津神夕陽です。 皆さん宜しくお願いしますね♪」  昇と言う初心者がいる事から、夕陽先生がまずは素振りからと太い木刀を大上段に構えて音を立てて振り下ろす。  昇には、先生が振り上げる時に大地からエネルギーを汲み上げていたのを見て尋ねた。  「えっと、息を吸いながら地面から魔力を汲み上げて振り下ろす時に解き放つ感じでしょうか?」  「はい、天照寺君は目の付け所が良いですね♪ より正しくは、振り上げた際に天からも気を戴くと言う具合です」  昇の質問に先生が答える、ついでに言えばオノゴロ壱根流とは一つ一つの動作に天地人の気と精根込めて技を振るう剣術らしい。  生徒全員が横一列となり、百メートルほど離れて的に向き合う。  先生がやったように魔力を汲み上げつつ、振り上げて振り下ろすと同時に解き放てば様々な色の魔力の斬撃が飛び出して的を破壊した。  的は自動で再生したので、生徒達もまた素振りで斬撃を飛ばす。  素振りで斬撃飛ばしをするだけで、この授業の時間が終わった。  昼休みは弁当タイム。  ヒロインがいる者達は、ヒロインの弁当に舌鼓を打ちいない者は学生食堂や購買へと向かう主人公格差社会。  「さあ、昇様♪ 神のカレーを召し上がり下さい♪」  「神様がカレー作るって凄いな?」  「ヒーローと言えばカレーは伝統ですから♪」  ヒロインがいる組の昇も、ソーラの手作りカレーを堪能したのであった。  今日は四時限だけの授業の日だったらしく、エミリー先生が教室に来て帰りのHRを行い授業は終わった。  「ふう、何とか異世界での初登校は終わったな」  「これから頑張りましょうね♪」  放課後、部活のある者達は部活へ行き下校する者は学園西側にある寮や校外にある自宅へと帰り出した。  「昇よ、貴様達は僚生か?」  「いや。俺達は通学だけど?」  カイルが自分のヒロイン達を引き連れて、昇の所にやって来る。  「良ければ、俺達と遊びにでもと思ったが貴様の女神の信用がまだないようなので挨拶だけで許せ♪ では、また会おう♪」  「待ってよカイル~♪」  昇に挨拶して教室を出るカイルについて行く、校長の娘と表示された金髪ツインテールのエルフ少女。  「さて、俺達も帰ろうか?」  「そうですね、カオスな学園生活の始まりです♪」  昇達も机の中の片づけをしてから、教室を出て帰宅した。
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