第七話:ソーラカイザーの完成

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第七話:ソーラカイザーの完成

 「五人戦隊になった事ですし、後はロボですね♪」  押しかけメンバーの三人目。  ピンクのマッシュルームカットの眼鏡っ子、猿娘のモモが叫ぶ。  作戦室に集った面々が頷いた。  「五人になり五体のマシンが揃った事で、完成図がこうなります♪」  「そう言えばできたんだよな、俺が乗るソーラホルス♪」  昇が喜ぶと同時に円卓の中心からホログラフが浮かび上がる。  上から赤い羽根兜のような頭部、金の獅子頭の胴に青き龍の足腰。  右肩と右腕がピンクの猿、左肩と左腕が緑の象。  五体の獣型メカが一つとなった巨人、ソーラカイザーだ。  「重機や消防車両の機能もあるので、戦以外にも使えますぞ♪」  「食堂の機能もあるから、被災者に食事を提供できるパオ♪」  青玉とナパティが、機能を呟く。  「戦い以外にも売れる芸があるのが素敵ですね♪」  「いや、その言い方!」  「モモさんの言葉も間違いではないです、この世界では勇者はある意味何でも屋ですから♪」  「そこも地球のヒーローと変わらないな」  ソーラやモモの言葉に、世知辛さを感じた昇。  「でも、戦いで敵を倒すだけが勇者じゃないって言うのは新鮮パオ♪」  「民の暮らしや心を救おうとすると言うのは、地球の影響でござるな♪」  「英雄は、敵を倒して血筋を残すのが仕事みたいなのが今でも」  「それも一つの側面ですよね」  「まあ、何はともあれまずは動かして見ようぜ♪」  昇の言葉により、巨大ロボットの訓練が決定された。  まずは広い敷地内でと、ソーラシアの砂漠で試運転。  大地を並走する黄金の獅子と緑の象。  空を掛けるは青き龍と赤き隼と雲に乗った桃色の猿。  「おおっ! これが実際に乗り物を飛ばす感覚か!」  レッドに変身した姿で昇が呟く。  コックピット内の二本のレバーを、拡張現実で表示された説明文に従い前後左右に動かしす。  レバー操作により起こる加速や減速。  上昇や降下に、左右の旋回と試して行く。  「レッド殿! 早く、合体を所望いたす!」  「いや、何でブルーは興奮してるんだよ!」  通信ウインドウが虚空に出現し、ブルーがハイテンションで叫ぶ。  「合体は、私達の魂も引き寄せて繋げるのです♪」  「推しメンとの魂の触れ合い、私も知りたいです♪」  「僕もパオ~♪」  ゴールドが解説し、ピンクとグリーンが合体を急かす。  「よし、魂結合体(ソウルドッキング)ッ!」  レッドが操作盤のレバーの間にある小さいピラミッド型の結晶に触れる。  すると一瞬、周囲の景色が真っ黒になり素の昇の状態に変わる。  次に四方からソーラにナパティに青玉にモモがタックルで昇へと抱き着く。  「この押し競饅頭が魂の触れ合いか?」  「ああ、推しの魂が素敵でござる♪」  「心がウキウキです♪」  「パオ~ン♪」  「元気が湧いてきました♪」  パイロット達が精神世界に入る中、機体はきちんと仕事をしていた。  鳥型のホルスは羽根飾りの付いた兜のような形に変形、スフィンクスから出た頭部に合体。  ドラゴンも頭部から地面に着地してハの字に折れ曲がり足腰となり、スフィンクスが上に乗り合体。  ピンクの猿、ソーラエイプが腰を曲げて前屈の姿勢になれば猿の頭部が肩アーマーになり合体して右腕に変形。  緑の象、ソーラエレファントが前足立ちのポーズで頭部が肩アーマーとなった左腕に変形して合体。  五つの獣の頭を持つ巨人、ソーラカイザーが誕生し砂漠の地に降臨した。  「はい、皆さん全員集合ですね♪」  ゴールドが確認する。  「俺の四方、皆に囲まれてるんだけど?」  センター席に配置になったレッドが驚く。  「推しの隣で幸せでござる♪」  「ウキウキです~♪」  「背中は任せてパオ~♪」  「私は背中にあなたと言う太陽を背負えて満足です♪」  「これが女神の愛の重さか、覚悟を決めて受け止めるぜ!」  「「完成、ソーラカイザーッ!」」  皆で叫び、機体に拳を突き出すポーズを取らせる。  「良し、折角合体したし早速どこかの誰かのお役立ちに?」  「それでは、外へ出ましょう」  「いざ実戦ですな♪」  「派手に行きましょう♪」  「人助けセンサー確認、巨大案件ヒットパオ!」  「おっし、縄張り外だがお助けに行くぜ♪」  テラランドの上空に来たソーラカイザー、センサーで自分達が役立てそうな事件を探して見つけたのはオノゴロ南方の火山島での事件だった。  『ゴワ~~~ッ!』  日本で言う小笠原のような火山島、噴火だけでも島民には厄介だが火口から巨人型の怪物が飛び出して来たならば更に大惨事だ!  燃え盛る溶岩の巨人、ラバジャイアント。  「大変だ、山からバケモンが出た~っ!」  「皆、外の方が危ない柄の中に隠れろ~っ!」  怪物の出現を目撃した麓の農民達が、慌てて畑から我が家へと駆け出す。  「お、おい! 今度はそらからデカい巨人が来たぞ!」  「鳥か? 龍か? 何だありゃ?」  「馬鹿、空の方はステータス見ろ! 勇者様じゃ!」  立ち止まった農民の幾人かがステータスチェックでソーラカイザーを確認。  「こんな島にも勇者様が、ありがたや~っ!」  ソーラカイザーを見て拝み出す農民も出てくる始末。  「馬鹿、あぶねえから家に入れ!」  ソーラカイザーを拝む農民を引きずり、家の中へ運ぶ農民。  勇者の救いはありがたいが戦場にいたらヤバイ。  良い意味で農民達は、危機に慣れていた。  「おっし、自分達から避難してくれたぜ♪」  「ありがたいですなあ♪」  「麓の村に被害が出る前に倒すパオ!」  「デビュー戦、がんばります♪」  「それでは皆様、参りましょう!」  戦隊の気持ちは一つとなり、ソーラカイザーが敵と向き合う。  「先手必勝、ノーズインパルスパオ!」  「ドラゴンポンプも行きますぞ!」  ブルーとグリーンが叫べば、象の頭が空から拳までスライドする。  そして、右の爪先となった龍の口と左手の象の鼻から同時に放水攻撃が行われて敵を苦しめる。  『ゴワ~~~ッ!』  ラバジャイアントが痛みに悶えつつ、体から火の玉を発射する。  「何の! レッドさん、エンチャントをお願いします!」  「オッケ! 頼むぜ!」  「はい、エイプキャッチです!」  レッドとピンクの意思に機体が応じ、右手が炎に包まれた上に伸びて火の玉を受け止めて握りつぶした!  「ソーラカイザーはそこらの巨大モンスターには負けません♪」  ゴールドが仮面の下でドヤ顔をする。  「良し、ヘリオライトソードを頼む!」  「お任せ下さい♪」  レッドの頼みにゴールドが答える。  胴体のスフィンクスの口が開き一振りの巨大な両手剣が出現した。  ソーラカイザーが両手剣、ヘリオライトソードを大上段に構える。  「必殺、サンライトスラッシュ!」  レッドが叫べば、銀色の刀身に陽光が集い金色の光の刃になる。  振り下ろされた光の刃は、ラバジャイアントだけを一刀両断に断ち切る。  悲鳴を上げる間もなく、爆散した溶岩の巨人。  剣を異空間へと仕舞い、ソーラカイザーは左手の象の鼻を鞭の如く振り回して敵の破片が村へと行かないように全て叩き落したのであった。  「ふう、急いで来たんで結界を貼り忘れてたぜ」  戦闘前に結界を張り忘れた事を反省するレッド。  「ドンマイパオ、被害なしで何よりパオ♪」  「一件落着、事もなしでござる♪」  「そうですよ、無事の解決を喜びましょう♪」  「小さいですが大きな一歩です♪」  「そうだな、ありがとう皆♪」  仲間達の言葉に礼を言うレッド。  かくして、ソーラレンジャーは戦隊として生身での戦いよりも先に巨大戦尾デビューを勝利で飾ったのであった。  島の農民達に感謝されつつ、現場から飛び去るソーラカイザー。  ソーラシアへと戻り、機体を分離させて神殿の格納庫へと入れて行く。  機体から降りて変身を解いた昇達は、作戦室に集まり勝利を喜び合った。
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