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第八話:部活でも戦隊
「先に巨大戦から始めたけれど、この世界にも悪の組織っているのか?」
「はい、勇者新聞をどうぞパオ♪」
「え、そんな新聞があるのか?」
作戦室で休憩している昇に近づき、彼の前に新聞を差し出すナパティ。
オノゴロ島で流通している勇者関連の専門誌だ。
「おお、ソーラカイザーが記事になってるでござる♪」
青玉も作戦室に現れて昇へと近づき、新聞に目が行く。
「皆さん、実家からバナナの差し入れが決ました♪」
モモが段ボール箱を抱えて作戦室へと入って来た。
ちなみに彼らの現在の服装は担当カラーのジャケットに白のズボン。
ジャケットの背と胸には、太陽と向日葵のマークとチーム名のロゴがプリントされた彼ら用の制服だ。
「皆様、お待たせいたしました♪」
ソーラが最後に現れる、彼女もジャケットと白ズボンだ。
「ソーラ、嬉しそうだけどどうしたの?」
「きっと、面白そうなことパオ♪」
「何やらイベントごとの予感でござるな♪」
「ウキウキしますね♪」
昇達が口々にソーラに向けて語り出す。
「はい、私達に臨時収入が勇者組合から支払われました♪」
「例の巨人退治の報酬でござるな♪」
「やったパオ~♪」
「お賽銭やカレー屋さん以外での初収入です♪」
「勝手にやっちまった事だけど、貰って良いのかな?」
昇的には、放置できずロボの実地訓練も兼ねて勝手にした事とでお金を戴けるような仕事をしたのかと言われると微妙であった。
「良いんでござるよ♪」
「カレー屋さんの運営費用にして、皆に還元すれば良いパオ♪」
「いただいた報酬は、綺麗に使えば良いと思いますウキ♪」
「モモは、時々猿アピールして来るな?」
「個性を出すのは大事ですから、アピールして行かないと♪」
ソーラが頭にヒマワリの花を咲かせて個性を出す。
「で、幾らでござるか♪」
青玉がアニメ見たく、目を小銭にしてソーラに尋ねる。
「税金やら諸々差し引いて、一人支給額は一万ゴロンです」
ソーラがうなだれた、一ゴロンが一円なので一万円ほどだ。
「……せ、世知辛いでござるな」
「明細見たら、天引きされまくりパオ」
「皆さん、日給一万円だと思えば良いんですよ!」
「ま、まあ天引きされまくりでこれなら良心の呵責なく貰えるからいいや
なご祝儀だと思おうぜ皆♪」
昇は笑って、無理やり納得した。
ロボでの初出動の報酬が激安だったが、昇の気分は晴れた。
「ですが、今回で名が知られたので組合から案件が紹介されたのは前進ですよ皆さん♪」
ソーラが拳を握り力説する。
「ソーラ、商売の神の端くれとして仕事の内容はチェックさせてほしいパオ?」
「はい、勿論ですよナパティさん♪」
「ほ、法律的な事なら私も見られます♪」
「え、モモって凄い神様なの?」
「モモ殿、凄いでござるな♪」
「通信教育で取りました。 神様が守る法律限定の、神法代書人の資格を持ってます」
「良く知らないけれど、凄いなモモ」
「神も法の縛りがあり申す、故に人の法律とかは専門家に委託でござるな」
モモの言葉に青玉が呟く、餅は餅屋が安心だ。
「はい、私も司法神の家系なら人の法律もマスターできたんですが我が家は荒事屋の破壊神の家系なんです」
モモが会話の中で出自を語る。
「農業してるのに破壊神なんだ、しかし勉強って大事だな」
「ええ、暴れるならルールを守って暴れろがやらかしてきた父の口癖で」
「法整備の大切さが実感できたよ」
テラランドが、色々と法整備がされていると知った昇であった。
翌日、ヤツガミ学園の教室。
「ロボって良いよね♪」
「羨ましい、何処で買ったの?」
「あのロボ、乗せてくれない?」
昇の周りには、ソーラカイザーを知った日本出身の英雄候補の転移者や転生者の男子生徒が集っていた。
「ソーラカイザーは、自社制作で俺ら専用だからごめん」
「あ~、ワンオフ機体かって痛いから止めて!」
「まあ、あるあるだよな~! ちょ、ごめん浮気じゃないからね!」
「魔法の才能よりもロボが欲しかった!」
昇が謝ると彼らは納得した。
ロボの話題について行けず、嫉妬した自分達のヒロインに腕力で昇の席から引き離されて連行されて行く英雄候補達。
「流石だな、昇よ♪」
カイルが今度は昇に近づいて来た。
「ロボと仲間のお陰だ、仲間達に助けがあってあの島の人達を助けられた」
「そのように言える事が流石なのだ、そこがお前の美徳だ」
「ああ、ありがとよ。 そっちは大丈夫か?」
「ふ、俺も仲間がいるからな♪ いずれお前とも交わる時が来るだろう♪」
不敵に良い笑顔で笑うカイル、美形タイプの主人公は様になるよなと猿顔っぽいがギリギリフツメンに入れる顔の昇は感じた。
「昇さんは、優しい系の素敵なお顔ですよ♪ イケ猿です♪」
猿の女神のモモから褒められる。
「昇殿のお顔は、拙者のドストライクでござる♪」
龍神である青玉は、ハアハアと息が荒く語り掛ける。
「私は好きな顔パオ~♪」
ナパティは、鼻を象の物に変えて昇の頬をさする。
「私、昇様の写真集出したい位なのですが?」
ソーラは、何処からか一眼レフのカメラを取り出して構えた。
「ああ、ありがとう! 落ち着け、俺はお前らに愛されてれば良いってことはわかったからな? ちょっとステイ、ステイ!」
女神たちに迫られて照れつつもたじろぐ昇。
カイルが去ると離れていた仲間達が集う、学校の席の並びもソーラカイザーのコックピットと同じく仲間達に四方を囲まれている昇であった。
朝の雑談が終わると、先生が教室に入って来てHRが始まる。
「皆さん、英雄活動で忙しでしょうが部活動も必須ですので活動用紙の提出をお願いしますね♪」
エミリー先生が紙の束を取り出し、前の席の生徒に渡せば生徒の手により順繰りに配られて行く。
「エミリー先生、当然自分達で部活動を立ち上げても良いのだろう?」
「勿論です、顧問や活動実績などは必須ですよ♪」
席に着いたカイルが手を上げ、エミリー先生に尋ねれば答えが返って来る。
HRが終われば授業、午前中は一般教科がずらずらと続く。
「ああ、女子と昼飯が食える学生生活って素晴らしい♪」
昼休み、校庭の隅の木の下にシートを敷いて弁当を食べる昇達。
「拙者も、アオハルしてるでござる♪」
「青春、素晴らしいですね♪」
「ナンもあるパオ~♪」
「ナパティさんとの合作、バナナのナンはおやつにもなります♪」
「うん、これはこれで売れそうだな? クレープにもできそう♪」
「ですね、試作して見ましょう」
「ソーラ殿、仕事は離れましょうぞ♪」
平和な学園生活を楽しむ昇。
この平和なひと時が、何よりの戦士の報酬だと感じられた。
「そう言えば、俺達は部活はどうしようか?」
昇がナンを食う手を止めて仲間達に尋ねる。
「ふむ、やはり戦隊部でござろう♪」
青玉がドヤ顔で語る。
「賛成パオ♪ 部活動なら学校でも戦隊活動が可能パオ♪」
ナパティも同意する。
「そうですね、部室は校外にあっても良いみたいです」
モモが携帯端末を取り出してヤツガミ学園のサイトを調べる。
「昇様は、何かほかに興味のある部活でも?」
ソーラは、昇に意見を求めて来た。
「ああ、俺は戦隊部の立ち上げで行きたい。 そうすれば、もっと皆といる時間が増えるからな♪ 恥ずかしいけれど、俺はお前らと離れるのが恐い」
昇は自分の気持ちをはっきりと言う。
自分を想ってくれる仲間達を得た事で、同時に失う怖さも得た事を伝える。
「わかります、私も一度は昇様と離れておりましたから」
「拙者も、昇殿を失いたくないでござる!」
「僕も同じ気持ちパオ♪」
「そのお気持ち、イエスです。 得ると失うのは繋がっていますから」
「ああ、だから一緒に立ち上げよう。 新しい仲間も受け入れよう、俺達が孤独にならないように、誰かを孤独にしないように。 人も神も、一人で生きるにあらずだ!」
昇が手を突き出せば、仲間達も手を出し重ねる。
かくして、昇達は学園でも戦隊活動をして行こうと決意した。
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