第九話:知名度を上げよう♪

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第九話:知名度を上げよう♪

 「そう言えば、この世界の悪の組織について調べないとな」  仲間達に向けて語り出す。  「悪の組織とは、具体的にはどのような? 盗賊の類でござるか?」  青玉が昇に聞き返せば、それも含めてと昇は返す。  「オノゴロの中で探すパオ?」  「取り敢えずは、他の所も気になるけれど」  他所の国出身のナパティは、何処で探すのかを尋ねる。  昇としては、まず近場からと答えた。  「私達の管轄内では、そう言う輩はまだいませんね」  モモが、現在自分達の管轄している範囲で知らべて見た結果を告げる。  「他の国や大陸へ行くには、まだ予算や格付けが足りません」  ソーラはすまなそうに語る、何事にも予算はいる。  「行けるとしたら、私やナパティさんの実家ですかね?」  「外国へは、縁故とパスポートと根回しがいるパオ」  「何と言うか、戦い以外で面倒臭くなりそうだな?」  「まったくでござる」  昇たち全員が世界を舞台に活動するには、まだまだ格が足りなかった。  地道にご当地ヒーローから、成長するしかないようであった。  雑談を終えてからは会議。  土曜日なので弁当屋の業務は休み。  作戦室の円卓で昇達は顔を突き合わせて話し合う。  地球ではヒーローが悪の組織と戦っているが、テラランドではどうなのか?  「ソーラレンジャーも、悪の組織がいるなら見逃せないかなと?」  昇は仲間達に話を振る。  「昇さんの話だと、地球が悪の組織だらけと言う事になりますね?」  モモが疑問形で昇に尋ねる。  「うん、間違いではない」  「治安悪すぎでござるな、地球」  「でも、治安の悪さはこっちも同じパオ」  「ええ、だからこそ私達の需要があるのです!」  「ソーラさん、商売っ気が強くて黑いです」  モモがソーラにツッコむ。  「勇者チューブでの配信も頑張りましょう」  ソーラがツッコミは置いておいて力説する。  「公式動画配信でござるな♪」  青玉がドヤ顔。  「ソーラレンジャーダンスとか考えて踊るパオ♪」  「カレー以外のグッズも売りましょう♪」  「いや、戦いの話題からずれてね?」  「昇殿、戦は金策と備えからですぞ♪」  「青玉が、常識的な事を言い出した!」  「昇様、戦隊も商売ですから♪」  「いや、言い方! 理窟はわかるけどな?」  仲間達の言葉に昇は溜息を吐いた。  「では、イワヤマ村で撮影をいたしましょう♪」  「宣伝活動も大事だな、仕方ない」  「ロボと湖をバックに、皆でダンスパオ♪」  「良いですね、ウキウキです♪」  会議の結果、青玉の住んでいた湖前でPV撮影が決まった。  会議が終わればトレーニング、日々の鍛錬は欠かせない。  昇は、白い稽古着に着替えて仲間達から指導を受ける。  「昇さん頑張って下さい、お茶が揺れてますよ?」  「うぐぐぐぐっ!」  基地内にある道場。  昇は両腕と頭と膝の上に、お茶入りの湯呑を載せられて空気椅子状態にされていた。  站椿(たんとう)と言う足腰や体幹を鍛える筋トレだ。  「深呼吸も忘れずに、魔力を鍛える効果もあるんですからね?」  「ふおおおっ!」  厳しく指導するモモ、昇も頑張る。  昇が鼻血を出した所が限界とみて、ナパティ達がお茶を回収する。  倒れかけた昇はソーラがキャッチし、青玉がお茶を飲ませる。  「ふう、道は遠いぜ」  「千里の道も一歩からパオ♪」  「これも、戦いを生き抜くためです!」  「一休みしたら、拙者と剣術でござる♪」  「昇さん、ファイトです♪」  「おう、鍛えるぜ!」  師匠役の仲間達に鍛えてもらう昇、次は青玉から剣を習う。  「おお、背筋と魔力の練り具合が良くなってますぞ♪」  「ありがとう、鼻で息を吸い足の裏から臍の下と汲み上げる」  背筋を伸ばし呼吸を整えて、竹刀を振り上げて下ろす。  站椿と同じく、この上下素振りも魔力を錬り上げる役割がある。  練り上げるに加えて、力を伝導させる事も鍛える。  「てりゃっ! せいっ! はっ!」  「そうそう、いかに素早く動きながら汲み上げた魔力を打ち込みと同時に流し込むかでござるよ♪」  青玉が受け手になり、昇の竹刀の打ち込みを受けて行く。  「剣の次は格闘パオ♪」  「おう、宜しくお願いします!」  青玉の次はナパティとの格闘の稽古、まずは全身のストレッチから始まる。  「筋肉と間接の柔らかさは大事パオ♪」  「いや、体がバキバキ言ってるんだけど?」  「それは体が凝り固まってるからパオ、しっかりほぐすパオ♪」  整骨院のようにバキバキとストレッチでほぐされてから技の稽古。  「はい、スタンダードに構えてパンチからジャブジャブ♪」  ナパティがまずはジャブを打てと指導。  「昇さん、打撃はリズム良くですよ♪」  モモがタンバリンを鳴らしてリズムを取る。  「ミットは拙者が担当するでござる♪」  「私はマネージャーポジで♪」  ミットでの受け手は青玉、ソーラは回復担当。    仲間達から訓練を受けた昇、その日は泥のように眠った。  翌日、昇達はイワヤマ村の湖龍神社を訪れた。  「俺達の所為だが、鳥居とピラミッドの組み合わせがカオスだな」  「湖が綺麗でカレーの美味しい、面白観光地ですね♪」  「ちなみに、湖の中にソーラカイザーを待機させております♪」  「皆で、キッズ達に受けるPVを撮影するパオ♪」  「投げ銭ガッポガッポでござるな♪」  湖をバックに昇をセンターに左がソーラとナパティ、右が青玉とモモ。  「行くぜ、ソーラチェンジだ♪」  全員同タイミングで左手首の変身ブレスを胸の前にかざし変身。  「赤の変身勇者、ソーラレッド♪」  レッドが左手を天に突き上げるポーズで名乗る。  「青の変身勇者、ソーラブルー♪」  ブルーは片膝をつき抜刀したかのように右腕を振り切るポーズ。  「桃の変身勇者、ソーラピンクです♪」  ピンクは中腰で右拳を突き出す崩拳のポーズ。  「緑の変身勇者、ソーラグリーンパオ♪」  グリーンは両腕と右膝を上げたムエタイ風ポーズ。  「黄金の変身勇者、ソーラゴールド♪」  個人の名乗りの締めはゴールドが、胸前で両掌を合わせて花を作るポーズ。  「変身勇者隊、ソーラレンジャー♪」  レッドがチーム名を名乗れば、彼らの背後でそれぞれの色の爆発が起こる。  「ちょっ! 後ろ爆発っ? 爆薬使う許可取ったのか?」  「これはセーフティー解除した時の余剰エネルギー放出です♪」  「ウキウキな爆発ですね、不意打ち対策に使えます♪」  「私達は、火薬もCGもいらないパオ♪」  「湖畔の形とか変形してないでござるな、景観良し♪」  名乗った後が、グダグダになるソーラレンジャーであった。  続けて、湖からソーラカイザーを浮上させてロボの前でダンス映像。  変身解除して素顔モードで、昇から踊り出す。  「両腕を上げて丸い太陽、開いて大の字一回り♪」  シンプルな動作で個人パートを踊る昇。  「右手でズバッ♪ 左手でズバっとバツの字切りでござる♪」  青玉もわかりやすい動作からの回転。  「イーアルワンツー、アッパーです♪」  モモは左右の連続中段突きから、両掌底を突き上げ。  「肘を上げ上げ、膝を上ゲパオ♪」  ナパティは左右の肘打ち上げからの、左右の膝の蹴り上げ。  「天に羽ばたき花が咲く♪」  最後はソーラ。  両腕を羽ばたかせてから頭上に上げ、両掌底を合わせて花を作る。  締めは全員横並びで同時にくるりと回転からしゃがみ、開いた両手を突き上げて体を台の字に開いて立ち上がる。  同じ動作を変身後は、バックのソーラカイザーも踊る。  「ふむ、昇の奴は相変わらず興味深い♪」  何処かにある鬱蒼とした森の中。  昇達と似た白のスーツの上に黒い追加装甲を纏った戦士が、左手首のブレスレットからスクリーンを出して昇達の様子を見ていた。  戦士の足元には、モンスターの骸が並ぶ。  「俺も番外の戦士として、奴らを食うほどの登場をしてやらねばな♪」  変身したカイルは一人呟く。  カイルの思惑を知らぬ昇達。  完成したソーラレンジャーのPVは、ダンス初心者でも踊りやすいと高評価を得た。
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