The night

1/4
前へ
/4ページ
次へ
 僕はもう後悔していた。  今夜も一人で来るべきだったかもしれない。  その後の展開を変に期待して、行きつけのダイニングバーに誘ったが、もう目の前の女には興味がなくなった。  事前に平気でタバコを吸う女とはキスもその先も遠慮したい。染みついたヤニの匂いで僕はすっかり萎えてしまう。  あと、無神経に気分の下がる余計な質問をする女も無理だ。    「どうして、その人と結婚しなかったの?」  隣り合わせで座る女が少し鼻につく香水を匂わせながら、眉を浮かせて僕に訊いた。  その指先には、もう三本目のタバコがある。  僕は思わず、顔をしかめそうになった。 「やはり若い女がいい?」 「そう一概には言えんよ。若さと浅はかさは紙一重だ。が、歳を重ねても、そういう若さだけを引きずっているのがいる」 「イタいね」 「知れば知るほど分からないことが増えていくものなのに、下手に歳を重ねただけで、そのよく知りもしないことで張り合おうとしている」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加