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彼に関して器用に立ち回ることに心が向いている様子だったので、僕は一つだけアドバイスを送った。
その男がまともなら、小手先の恋愛テクニックとかでこの女になびくことはないだろうから。
「君は、知恵が足りないことよりも、愛が足りないことを嘆くべきだ」
女は、少し不快そうに見えた。
それはそうだろう。
が、僕も期待した通りにならなかったせいで、辛辣な意見を述べたわけでもない。
女がトイレに立ったとき、会計を済ませた。
マスターは、彼女のことを詮索しないかわりに「お相手の方、若くて素敵な人ですね」といった。
「だといいが」
僕はそういうとマスターが戸惑いを見せた。
やむなくこう付け加えた。
「いや、独り言」
すると、彼は咳払いして目をそらせた。
女が席に戻ってきたのが見えたらしい。
振り返ると、女はスマートフォンを手にしていた。
それに気づいた僕は席に着かず、明日の朝が早いから、と話してそのまま女を置いて店を出た。
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