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家に戻ると女からメッセージが届いていた。
酒を奢ってもらったことを感謝する内容だった。
楽しかったのでまた今度誘って欲しい、という社交辞令までついていた。
僕は思ってもいないことを口にしたり、書き送ったりするのは苦手な方だ。
「どういたしまして。」とだけ返しておいた。
僕には「またヨロシク」と書いて、一応次の可能性を残しておく知恵も器用さもないし、少しばかり始まりを期待していた愛なんて微塵もない。
いつのまにか誰かとつながることをあきらめてしまっている自分に気づいた僕は、突然雨のように降りかかってきたそれを溶かし流し去るために、とっさに買い置きの新しいウイスキーボトルを開けた。
CDデッキから流れるグルーヴィーなファンクロックギターの音色に酔いしれる。
僕はそのまま、今夜のことを忘れて眠ることにした。
(了)
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