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「ヘリオス。お前は俺より強い。だから俺が勝つ見込みのある最善の策は……騙し打ちしかなかった」
「が……はぁ……っ!……」
血を吐きながら、ヘリオスがアポロンの身体にもたれかかる。
心臓を拳で潰され、そのまま胴を腕が貫いている。致命傷だった。
しかし、彼の手には依然、光の鞭がある。最期の力を振り絞ればアポロンもろとも刺し違えることはできる。
だが、ヘリオスにはそんな無駄な行為をする気はない。
いや、そもそも自らの命どころかアポロンの奇襲などどうでもいいと思える〝予見〟を見たからだ。
「な、なぜだ……アポロン。なぜ……」
「何も無いのかって? 当たり前さ、俺たちはみんな――一〇〇年後には全部消えてなくなるんだから」
「なんだ……と……?」
「あたり一面真っ暗闇。何も無い。何も見えない。それがお前も見た一〇〇年後の今日さ。『神』もヒトもなにもかもが、消えてなくなっているのさ」
「馬鹿な……そんな〝未来〟……! お前以外の『神』は知っているのか……?」
「言えるわけないだろ? なんで俺たちが滅ぶのかすら分からねぇし、どう対策すればいいのかもわからない。滅びの兆しすら見えないのに、『世界が滅びます』っつっても、誰も信じない。いや、信じたとしても俺すら原因が分からないのに対策しようがない」
「だからさ」と、アポロンは死にゆくヘリオスに告げる。
「お前が俺を殺してこの世に存在したとしても……お前とそのお仲間に待ってるのは〝滅び〟だけなんだよ、ヘリオス。俺たちの代わりに、お前たちが世界ごと滅ぶ。ただ、それだけなんだ」
「……嘘――だ」
絶対不可避の……未来。
誰にも何も言えず、ただひたすら孤独に抱え続けるアポロンの〝苦悩〟。
その片鱗を見せつけられたヘリオスは……絶望とともに息絶えた。
アポロンは彼が絶えたのを認め、彼の身体からゆっくりと腕を抜き放ち……丁重にその場に横たわらせる。
するとヘリオスの身体がまるで空間に溶け込むかのように消滅し……それと入れ替わるようにアポロンの影が出現する。
アポロンの……〝存在証明〟が。
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