第一話:光無き世界

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 『オリュンポス』。  漆黒の闇の下――光輝く超高層ビル群が広がるこの理想都市を、神と人はそう呼ぶ。  暗黒を切り裂く強烈な人工の光を帯びた都市群。その隙間を縫うように、がヘッドライトを点けて空中を飛び交い、その下では、焼き付かんばかりに輝く街灯に追従するように、人間たちが往来を行き来している。  ――もしこの頭上を飛び交う車が事故を起こし、その下を歩く人間たちに落ちてきたら……?  などと考えるな者はこのオリュンポスにいない。  これらすべて、全能なる『神』がつくりしモノ。  もしもの事故などあり得ない。  人間たちが一から編み出し作り出したものなど、この世界には一つもないのだ。『神』がつくりしモノに、たかが人間が疑りをかけるなどあってはならないことである。  もし『神』が作りしモノに万が一の不備があるとするなら……それは、他ならぬ『神』の意図が働くためであろう。  到底人間などでは創造などできない、まるで迷路のように様々な都市機能が複雑に入り組み、しかして超精巧なパズルのように精緻に創られたのが、美しき理想都市オリュンポスなのだ。  しかし……ならば、この世界を包む〝暗黒〟はなにか。  なぜ本来であればのはずなのに闇に包まれているのか。  なぜこの都市は、闇を拒絶するかのように光輝いてみせるのか。  謎多きここは、陽光無き『オリュンポス』。  闇を恐れる者たちが暮らす世界である。
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